ムリ・ムラ・ムダの削減
目次
これまで9回にわたり「製造業で営業利益率を上げるには?」をテーマにお話ししてきました。
中でも私たちが強く勧めたいのは「定額制メンテナンス」の事業化であり、そのステップも詳しくご紹介しました。今回はまとめとして、改めて原点を見直してみます。
営業利益を上げるとなると、つい「その製品を売る」ことに焦点を絞ってしまいがちですが、本質は別のところにあります。
お客様は「その製品が欲しい」のではなく「その製品を使って効率よく生産したい」のが目的だからです。これを忘れてはいけません。
「定額制メンテナンス」を事業化する主眼もここにあります。
お客様の生産をサポートするためにメンテナンスを“あえて定額”にするのが特長です。
しかし「売る」に集中していると視点のズレが社内で起こり、事業化の手前で問題になります。
どんな議論になってしまうのか、どう解決すればいいのかを考えてみましょう。
「定額制メンテナンス」を新事業として立ち上げようとすると、社内にはよく「3人」の反対者が現れます。
彼らは「定額でメンテナンスを保証してしまったら、予測不能な事態に対応できない」と反対します。お客様が正規の使い方をしないかもしれない、そこまで保証すべきなのか、責任を取る必要があるのかを心配します。
彼らは「そんなサービスの前例がない、前例がないものはお客様が買うわけがない」と反対します。修理都度払いだったのに、その何十倍もの費用を前払いでお願いするのは不可能だと言います。
彼らは「定額で約束するリスク」を背負うことに反対します。定額以上の修理が発生したら大赤字です。会社も潰れかねないと考えます。
しかし、よく考えると彼らには反論できます。詳しくは以下です。
開発者が「予測不能」と言うなら、お客様のほうがもっと「予測不能」です。
そこを解決するのが技術者の仕事ではないでしょうか。
お客様にとって「予測不能」なことを予測して、何とかするのが私たちの仕事です。
自社の技術力を躊躇なく使ってもらえるのが「定額制メンテナンス」の柱です。
小さなトラブルの段階ですぐ呼んでもらえて、予測不能を潰せるのが大きなメリットなのです。
実はさまざまな企業が「前例」を作っています。
例えばボイラーで国内シェアトップの三浦工業、製鉄大手の神戸製鋼所、エレベーターなどを開発製作するフジテック、産業用プリンタではエプソンやキャノンなども「定額制メンテナンス」を取り入れています。
私たちがコンサルティングを行う企業でも実績があります。
自動車リースを扱う企業ですが、契約いただくことで「故障による突然の出費」の心配がなくなり、納得するお客様が増えて契約数が伸びました。すでに多様な業界での「前例」があるのです。
確かに修理費用だけを考えると、少額の都度払いより多額の前払いのほうがお客様は損をするように思えて、契約数が伸び悩みそうです。
しかし長期的に考えるとそうでもないのです。
もし軽微なトラブルについて、お客様が「小さいから自分たちで対処しよう」と考えると、必ず後々に大きな故障へつながります。
オーバーホールまで至ってしまうと生産ラインは止まって損害につながります。
また、調子が悪い機械を使い続ければ効率が下がり、対応する従業員の人件費も増加します。言い換えれば「見えない損失」がどんどん生まれるのです。
もし「定額制メンテナンス」を導入していたら、軽微なトラブルでも専門家である自社が呼ばれて対応でき、大事に至りません。
お客様の本当の目的である「この機械を使って効率よく生産する」を強力に助けることになるのです。
上記のような「定額制メンテナンス」の本来の役割について、全社のどの部門にいる人間もきちんと理解し、皆がお客様に伝えられるように環境を整えることが大切です。
何度も繰り返しますが「お客様の工場が安定して稼働でき、コストを最小限に抑え、デリバリーを間違いなく行えるように運営する」のを支援するのが製造業メーカーの役割です。
高価な機械を売り上げるだけが仕事ではないのです。
さまざまな方法がある中で、私たちが最も効果的で、かつ製造業メーカーにもメリットが出ると考えているのが「定額制メンテナンス」の導入であり、事業化です。
これは中小企業ほど取り入れるべきだと考えています。
なぜなら、ボイラー大手の三浦工業は他社に先駆けて「定額制」でメンテナンスを提供し、シェアを広げてきたからです。
「他社がやっていないから、うちもやらない」のではなく「他社がやっていないなら、うちが始めてお客様に喜んでもらおう」と考えてみてください。
攻めの経営のためにもぜひ「定額制メンテナンス」をご検討いただければと思います。
次の世代のために一歩前へ進みましょう。
皆様からのご連絡をお待ちしています