製造業で営業利益率を上げるには?【第3回】メンテナンス部隊のパフォーマンスを最大化するための準備

統括研究員 谷川大致
監修・執筆統括研究員 谷川大致
製造業で営業利益率を上げるには?【第3回】メンテナンス部隊のパフォーマンスを最大化するための準備

機械を扱う製造業企業にとって、メンテナンス部隊は営業と同様もしくはそれ以上に重要なチームです
なぜなら彼らは「保守契約」という定額サービスを黒字で運用し、お客様の信用を勝ち取るというミッションを持っているからです。

理屈では分かっていても自社で組織するのは難しいと感じる経営者の方は多いかもしれません。
実際に話を聞いてみると、踏み切れない最大の理由は「信用」にあるようです。

「メンテナンス部隊に任せると、余計な補修まで行って在庫や予算にダメージを与えるのではないか?」

確かにそうなると、わざわざメンテナンスを事業の柱にする意味がなくなってしまいます。
しかし、これは経営者による仕組み作りや環境整備によって解決できる課題です。

今回は、組織したメンテナンス部隊に最大限のパフォーマンスを発揮してもらうためのコツをお伝えします。
これは「社員に対して行う施策/組織として整える施策」の2つに大別されます。

社員向け施策:正しいコスト意識を持ってもらう

① 月次収支を共有する

まずは社員に向けてコスト意識の徹底を図ります。
仮に3年間の定額保守契約を結んだ場合、契約金額には3年間の人件費・出向費・部品代が含まれます。
メンテナンス部隊は最初にプールされたお金から経費を切り崩し、3年後になるべく多くの金額を残すようにしなければいけません。

「自分の仕事にどれだけコストがかかったか」「さらに無駄を抑えるにはどうすればいいか」を考えるためには、月次報告で売上と原価を算出し、一人一人の金額と内訳を確認するのが一番です。
具体的な金額を知ると改善すべき点や金額も明確に見えてくるからです。

② 無駄な部品交換・無駄な時間コストはなかったか見直す

月次で業務内容を見直す際は、「それが本当に必要な補修だったか」を精査します。
間違った判断があれば修正し、メンバーの技術や知識が足りなければトレーニングを行います。

③ お客様と拠点を支えている認識を持ってもらう

メンテナンス部隊はお客様視点で動くことが多いのですが、同時に所属する拠点にも貢献していることを伝えます。

組織向け施策:メンテナンス部隊を信頼できる仕組みを作る

組織として整える施策の大きな目的は、メンテナンス部隊に判断を任せられる環境の構築です。
権限委譲や判断材料など、信頼できない不安点があれば会社が仕組みを変えて解消するしかありません。

① 保守契約の値決め

定額保守サービスは自社利益がしっかり出る金額で契約し、その範囲内で「メンテナンス部隊ができること/しなくてよいこと」も明文化します。
サービスの範囲が会社として決まっていれば、メンバーも現場で迷うことなく安心して動けます。

② 部品構成図やマニュアルの提供

的確なメンテナンス判断や保守を行うためには、正確な事前情報が必要です。
自社で販売している機械の部品構成図やマニュアルはPDFなどでデジタル化し、PCやタブレットからアクセスできるようにします。

③ コミュニケーションツールの充実

タブレットのようなデバイス利用のほか、先輩に気軽に尋ねられる、質問があればすぐに出せるメッセージツールを使う、対面で行っていた決裁手続きをオンライン化する、などの環境整備が有効です。

④ メンテナンス情報を共有し、社内比較や参照を可能にする

メンバーそれぞれの経験を会社の財産として考え、取りまとめて誰でも参照できるデータにします。これがあれば現場判断で迷ったときでも自律的に比較したり、技術的な疑問を解消したりできます。

⑤ 部品の変更を極力しない・10年以上在庫を切らさない

開発や調達に関しては上記2つが挙げられます。
数年前の製品でも安心してメンテナンス作業をできるようにするため、会社の方針として定められれば理想的です。

メンテナンス部隊には「人と組織」の両面フォローが必要

組織したメンテナンス部隊が本領を発揮するためには、人材育成と組織整備の両面からのフォローが不可欠です。

メンバーに任せられないと感じるのであれば、任せられるだけの量の必要情報を研修で伝える。メンバーが不安に感じる領域があるなら、会社が組織的に改善する。

この両輪を回し始めると、皆に責任感が生まれます。特にコスト意識については顕著です。
多すぎる補修が出費に気づけば、大きな故障が出る前にチェックしよう、小さな異常も見直そう、消耗品は早めに手を打とう、と自然と考えていくようになるからです。

自律的に動けるようになれば、メンテナンス部隊の収支はどんどん改善していくはずです。
自社で改善プロジェクトを進めるのが難しいと感じたら、弊社にご相談ください。皆さんが抱えている現在の問題点を洗い出し、人と組織に効果的なご提案ができます

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

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