製造業で営業利益率を上げるには?【第5回】機械のメンテナンス・保守・保全 基本の9項目

統括研究員 谷川大致
監修・執筆統括研究員 谷川大致
製造業で営業利益率を上げるには?【第5回】機械のメンテナンス・保守・保全 基本の9項目

この記事では、初心者もベテランも覚えておきたい「機械メンテナンスの基本9項目」を紹介します。
製造業におけるメンテナンス・保守・保全は、製造販売以上に大切なサービスです。

メンテナンスは、トラブルとなった不具合を直すのはもちろん、コストを最小限に抑えて実践する必要があります。「今後の出向回数を減らす/メンテナンスにかかるトータル費用を減らす」という目的も踏まえると、以下の9項目がとても重要になってきます。

メンテナンス前の基礎準備

現場で効率的なメンテナンスを行うためには、事前準備が欠かせません。少しずつでも構わないので以下の項目はぜひ実現を目指してください。現場での負担が大幅に減ります。

① 図面とマニュアルを用意する

これからメンテナンスする機械の図面・マニュアルはメンテナンスチームで共有できるようにします。紙で閲覧可能にしておくほか、PDF化してタブレットで検索できるようにするのも有効です。現場で変更が見つかったら更新して、最新の情報を残すようにします。

② 故障やトラブル発生時の現象・手順をヒアリングする

トラブルによって呼び出されるときは、事前に発生時に何をしていたのか、どんなことが起こったのか詳しく聞きます
①の図面とマニュアルを照らし合わせてメンテナンスの手順を考えやすくなります。

③ 修繕ポイントを予測し、部品や消耗品を用意する

②のヒアリングで必要なメンテナンス手順の予測をつけ、考えられる部品や消耗品を揃えて持参します
「必要なのにない、また取りに帰る」という手間を考えると、多少余分に用意してもよいくらいです。

メンテナンス現場での工夫と着目

環境が悪い場合、通常なら1分で終わる作業について数時間かかってしまうときもあります。そのような失敗はメンテナンスの都度の工夫で防げます。

④ 作業現場をクリーンな状態にする

作業に不要な小物や部品が散らばっている場所では、正確な作業をするのが困難です。お客様のものであっても作業スペース内にあるものは移動させて、必ずクリーンな状態を作ります

⑤ 部品や工具のルールを決めておく

④を完了した後、おすすめなのはウエス(布)を敷いて「取り外したものは全てここに置く」と決めてしまうことです
また、使った工具もランダムに置くのではなく、必ず置き場所を自分で決めて守るようにしましょう。探し物の時間は一番無駄な時間です。

⑥ 後工程を楽にするひと手間をかける

例えば、どんな機械でも必ず扱うネジは、数年経つと固着してメンテナンス時にすぐ外せなくなります。外せば数分で終わる作業なのに、外すために何時間もかかっては時間の浪費です。それを防ぐのに有効なのは、取り付ける前に錆を落とす、ケミカル剤を塗布することです。ネジ配管ならシールテープを巻いてから締めることが挙げられます。
後々のメンテナンスメンバーにも役立つひと手間です。

また、配線や配管が入り組んでいる場合は、それぞれに印を付けておく、図面に反映させておく、というひと手間が後のメンテナンスコスト(費用・時間)を大きく省きます

単純なことですが、磨く・フィルターをきれいにするなどの手順も有効です。これらはそもそもの故障やトラブルを防ぐ効果があり、メンテナンス出向の回数自体を減らせます。

メンテナンス後にもできるフォロー

メンテナンスが完了した後でも、その先のメンテナンスコストを下げるフォローができます。属人的な技術や感覚ではなく、メンバー全体のレベルアップにつながるプロセスです

⑦ メンテナンス過程を記録して残す

どんな連絡が来たか/到着時の様子はどうか/何を直したか/どれだけ時間を費用をかけたか/故障以外にフォローした箇所は何か、などの基本情報は、必ず記録して後から参照できるように残します

その他、お客様の使用状況や環境、お客様からの反応や意見なども記録しておくと、後の訪問者にとって大きなヒントとなります。

⑧ ミスを報告できる風土を作る

メンテナンスの現場では「早く直してあげたい」という気持ちから焦りが出ます。そこでヒューマンエラーやケアレスミスを100%防ぐのは無理です。しかし今後は起こらないよう見直す工程は必要です。

そのミスはなぜ起こったのか、どうすれば防げたのか、情報はみんなで開示して共有する風土を作りましょう。叱責を怖れて隠す雰囲気ができてしまうと、重大な事故にもつながるからです。

⑨ メンテナンス部員を評価する仕組みを作る

①〜③の事前準備、④〜⑥のひと工夫、⑦〜⑨の仕組み構築、それぞれに貢献したメンバーには正当な評価がつく制度を作ります。なぜなら、このような個々の気配りが自社のメンテナンス技術や信頼をどんどん上げてくれるからです。

一気に全てをクリアするのは難しいかもしれません。しかし少しずつでも実践すればメンテナンスの質が上がり、メンバーにも行動の意味が見えてきます
その意識が次のメンテナンス作業にも生きてくるのです。もし実践できていない項目があれば、ぜひ見直してみてください。

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

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