収入保険と農業共済で、農業のリスクは大幅に減る

統括研究員 谷川大致
監修・執筆統括研究員 谷川大致
収入保険と農業共済で、農業のリスクは大幅に減る

もし、今より資金に余裕ができたら何をしてみたいですか。

農業保険を活用すれば資金の心配やリスクが減り、新しいチャレンジをしやすくなります。
利益を出せる高付加価値野菜への転換、積極的な農地の拡張、新たな人員の雇用など、前向きな農業経営にも取り組めます。

現在、農林水産省が用意している主な保険・共済は以下の2つです。

①収入保険

青色申告を行っている農家が加入でき、原則全ての農産物が対象。
自然災害による被害だけでなく、価格低下など経済的な収入減にも対応するのが特徴。

②農業共済

農業者全てが加入でき、米・麦・畑作物・果樹・家畜・農業用ハウスなど対象品目が定められている。自然災害や家畜の死亡などに対応しているのが特徴。

どちらも掛金について国から原則50%の補助があり、農家の負担を軽減するように制度設計されています。
それ以外にも、農業経営にとって見逃せない加入メリットがあります。

農地拡大のリスクを減らせる収入保険

収入保険を推奨する理由の1つは、補償範囲の広さです。

収入保険は自然災害による被害だけでなく、農家の経営努力だけでは避けられない市場の価格低下、就業者の疾病やケガによる収穫減、為替変動による大きな損失にも対応します。

また、前年より農地が増えた場合の悩みにも経済的な補償がなされるのも大きな魅力です。

例えば、前年Aさんが1ヘクタールで「10」の収穫を得て、今年BさんよりAさんへさらに1 ヘクタールの譲与があった場合、前年基準で換算すると2ヘクタールで合計「20」の収穫が期待されます。

しかし、うまくいかず今年の収穫が合計「11」となったとしても、収入保険に加入していれば損失を最小限に抑えられます。

具体的に収入保険では、想定された「20」の収穫に対して9割までを補償してくれます。
前年実績から「20」が予想されたものの「11」の収穫で終わった場合、「20」の9割である「18」に届くように、18-11=「7」が保険から補填されるのです。

また、農地拡大にともなう新しい雇用にも補償が役立ちます。
雇用を直接サポートするお金ではありませんが、経済的な支えがあれば増えた農地に見合った人員を揃えやすいでしょう。

保険期間は1年間なので、増加した面積の運営が安定するまで計画的に利用するのも有効です。

補償限度額は9〜5割の中から選択できるので、掛金や収支を考えて調整することも可能です。

施設園芸の復旧に収入保険と「園芸施設共済」を使う

収入保険と収入減少を補填する類似保険は重ねて加入することはできず、どちらか一方を選択しなければいけません。

しかし収入保険と固定資産の損失を補填する保険なら、同時に加入できます。
農業共済内の「家畜共済/園芸施設共済/果樹共済」が該当します。

近年は天候不順や大型台風などの被害が広がっています。
農作物だけでなく施設を復旧させるには経済的な支援が必要です。今後の農業を守るためにも、施設園芸農家であればぜひ両方への加入をおすすめします。

収入保険と「野菜価格安定制度」との併用について

「野菜価格安定制度」とは、指定野菜の価格が著しく低落した場合に生産者補給金を交付する制度です。

現在は2年間だけですが、出荷調整や数量確保によって契約数量を定めて低落後の差額の一部や掛かり増し経費を補填するタイプであれば、収入保険と同時加入できます(制度内の「収入減を補填する機能を有する事業」とは併用できません)。

「野菜価格安定制度」では価格に関するメリットを期間いっぱい活用し、3年目からは補償範囲が広い収入保険へ加入することをおすすめします。

収入保険の全国統計では、加入者の約52%が何らかの補償を受けているというデータがあります。資金に悩む農家こそ、ぜひ検討していただきたい方法です。

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

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