ムリ・ムラ・ムダの削減
化学工場を持つ経営者の中には、「うちの工場はもっとできるはずだ」「利益率をもっと上げたい」と思う方も多いのではないでしょうか。環境改善のために5S活動に取り組んでいる現場も多く、整頓や作業導線の見直しも進めているかもしれません。
しかしそれでも「これ以上何を改善すればいいのか分からない」と感じているなら、もう一度5Sの中の「整理・整頓」に立ち返ることをおすすめします。
例えば、余った原材料や専用容器、取引先からの支給品など、現場に「使っていないもの」が溜まっていないでしょうか。工場内は一見整っているようでも、実は必要のない在庫が占拠しているケースがあります。
または、本当はもう少し動線を効率化できそうなのに、皆がバラバラの意識で属人的な工夫をしていないでしょうか。このような無駄を減らすには、上からの指示だけでなく、現場からの提案を引き出す工夫が必要です。
改善活動に成功している先進企業では、「提案数が多いほど業績が上がる」という傾向が見られます。中身のレベルよりも数が出ていることが重要なのです。
しかもそうした提案の多くは「整理・整頓」に関する小さな工夫だと分析されています。つまり日常で気づいたことを気軽に提案できる文化が業績向上につながっているのです。
一方で、多くの中小企業では改善提案の件数が少なく、50名規模の企業でもやってはいても「月5件ほど、年間50件」という例もあります。社員数に対して1人1件も出ていない状況だと、改善の種を拾い上げる仕組みが機能していません。「整理・整頓」という5Sの基本についても、皆があまり意識せずに働いている状態だといえます。
提案活動が活発な企業では、年間で1人1000件を提案するケースも存在します。
空気のようにいつも皆が「何か良くならないか」と考える仕組みがあり、それが5Sの徹底を支えているのです。
改善提案の件数を増やすなら「1人○件以上」と個人数値を目標にするのではなく、まずは「皆が今より1件増やすにはどうすればよいか」と考えてみてください。
代表的なボトルネックとなっているのが、提案書式の煩雑さ、提案への心理的ハードルなどです。
提案フォーマットを見直し、最低限の情報だけで投稿できるように変更すると手軽さが向上します。
究極の手軽なフォーマットは、シンプルに実践する内容だけ記述する形式でしょう。LINEグループで写真と一言コメントを送るだけで「1件の提案」とするなら日付や名前の記述すら不要になります。誰でもすぐに参加できる形式作りが提案文化を根付かせる近道です。
5Sは「守るもの」ではなく「育てていくもの」です。初めに決めたルールを、現場に合うように柔軟に変えていけることこそが、5Sの真の価値といえます。
現場に合わない厳しいルールがあると、維持できず形骸化するリスクがあります。動線や管理のルールもそうですし、提案書を提出するルールでも同じです。
試してみて出来なかったらハードルを下げる決断も検討してみてください。提案書について記入項目を2つ減らしても駄目なら、もう1つ減らしてみる。数行を要求していたところを1行でOKとするなどです。
「こんなところまで下げてしまうのか」とプライドが邪魔をするかもしれません。しかし目的は「改善提案を1件でも増やすこと」ひいては「現場が納得して効率化すること」です。そのための通過点と考えて現場が受け入れやすい形まで砕いてみてください。
経営者にとって「5Sを自分たちで変えて育てられる現場」を目指すことが重要です。改善提案のハードルを下げ、現場からの声を吸い上げる体制ができれば、結果として工場の対応力や外部からの信頼性も獲得できます。
同時に、経営者の皆さんの「もっとうまくいくはずなのに」という悩みも現場の力で解決できるようになるでしょう。
次の世代のために一歩前へ進みましょう。
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