ムリ・ムラ・ムダの削減
私たちが手がけた農協や農機メーカーのコンサルの成果で、赤字だらけだった営業チームを黒字転換へ導いた例があります。
時間としては2年から3年をかけましたが、劇的な変化ではなく「基本を忠実に守り続けること」を重視した手法なので、どんな現場でもこれは再現しやすいのではないでしょうか。
ポイントは「適切なレバレートの設定」と「その厳守と確実な回収」です。
営業にとって一番の基本でありながら、しっかり実践できている現場は少ないと思います。まずはここから見直してみましょう。
「レバレート」とは「営業メンバーがお客様のために働いた際にかかる1時間当たりの料金」です。お客様のために1時間使ったらこの金額を請求してよい、という営業の基本ルールでもあります。
現在、平均的なレバレートは5000〜7000円程度です。しかし運用面ではいくつかの課題が発生しています。
第1の課題は、そもそものレバレート設定が安価すぎて、適切ではないことです。その数字は、本当にかかっているコストから逆算した適切なものでしょうか。後ほど計算式を紹介します。
第2の課題は、設定したレバレート通りに請求していないことです。現場の判断で「もっと安くします」「この代金は受け取りません」とサービスのつもりで請求しない例は皆さんも心当たりがあるでしょう。
この2つを克服した営業チームは、少しずつですが確実に収支が改善していきます。
まず第1の課題から考えてみます。
営業拠点は、このレバレート設定から得られる利益でコストを賄っている事実を認識します。
皆の給料だけでなく、会社負担の社会保険費も結局は営業メンバーによる収益から出しています。
では営業メンバーがいくら稼げばこれらを賄えて、さらに利益まで出せるでしょうか。仮に営業職1人の手取り年収が350万円とすれば、上記を含めて450万円ほどを稼ぐ必要があります。
年間実働時間1800時間で割ると2500円、最低でも1時間で2500円を生み出さないといけません。
ただし実働時間全部を営業しているわけではなく、移動や事務作業の時間も必要です。農協のデータでは67.5%が実働といわれるので、1時間当たりの最低額は3700円に上がります。
しかし、その他オフィス代、光熱費、ガソリン代、工具代、仕入れ代なども営業メンバーが稼いだ収益が元手です。
現場に出ない上司や営業支援の事務メンバーなどの給料もここから出ます。これらを全て足していくと適正レバレートは7000円ほどです。
本来私たちは、1時間お客様のために働いたらこれだけ請求してよいのです。
第2の課題である「レバレートの回収」は少し根深いかもしれません。値引きをしてしまう心理には、お客様への奉仕の心や親切心などが含まれているからです。
しかし技術料と知識を使って働いた費用を“請求しない”ということは、その分を他のお客様に負担いただくことになり、いわば不公平を作り出している状態です。
また、働いたのに収益を得ない振る舞いは親切でも何でもなく、拠点の収入とメンバーの給料を下げ、赤字を増やし、事務所閉鎖や離職の危機を招きます。それは誰も幸せにはしないのです。
限られた情報の中で農機の不具合を分析し、即時修理する技術は非常に高度です。
使う部品も原因を探る目利きも、元手はタダではありません。そこは皆さんが誇りをもって「仕事をしたのでこれだけ請求します」と言ってよいところです。
管理職の皆さんはこの点をメンバーに何度も説明し、かつお客様である農家の方々にも姿勢を知らせてください。展示会や会報などで繰り返し行うことが大切です。
値上げについては今なら「原料高騰の折り」という言葉で説明しやすくなっています。
冒頭で紹介した黒字転換できた拠点では、修理時に使うパッキンやグリス、ウエスなどの消耗品についても一律請求のルールを定め、毎回必ず回収する文化を作りました。
私たちも併走して皆さんの黒字転換をサポートできます。困っていたらぜひ相談してください。
次の世代のために一歩前へ進みましょう。
皆様からのご連絡をお待ちしています