ムリ・ムラ・ムダの削減
目次
製造業の機械を使い続けると、どうしても故障や劣化などは避けられません。
さまざまな原因が考えられますが、それでも事前の工夫で防げるトラブルが多々あります。
今回は、お取引先が購入契約をする前後から実際に納入するまでの間に着目し、あらかじめトラブルを減らす施策を紹介します。
ポイントは「安全第一」に徹すること、そしてお客様からの信頼を高めるチャンスであることです。
これから紹介する方法を使うと今までの営業活動と比べて手間は増えるかもしれませんが、確実に後々の大事故を防いでくれます。足りない項目はぜひ実践してみてください。
営業をかけてクロージングのタイミングが近づくと、皆さんはきっと心の中で「ここに設置したらどうなるか」を想定していると思います。
できれば本契約の前に、気づいた点を相手に知らせて環境を整えるように伝えましょう。
機械には消防法や社内規定によって設置条件があり、多くの場合は数値が定められています。数字で細かく決められているのは現場の安全を担保するためです。
守らずにいると大きなトラブルにつながります。
事前に以下の項目をチェックして、条件に合うように整備協力してもらいましょう。
設置条件より狭い空間で稼働すると「高温によって電気系統がダメになる/換気ができずに不完全燃焼を起こす/設置後のメンテナンスができない」などのトラブルが想定されます。
換気のためにドアを開け放して使用する例もよくあるのですが、セキュリティ面からおすすめできません。
きちんと隔離した上で十分な空間を取れるようにします。
不具合が発生して現場に駆けつけてみると、意外な原因が判明することがあります。
例えば不完全燃焼や停止が頻発する場合は、換気量が足りていないケースが多々あります。機械に十分な空気が入らないために稼働が停まってしまうのです。
また、近くで硫酸や硝酸などの薬剤を使っていて、知らない間に機械に取り込まれてトラブルの原因になることもあります。
これらはなかなか気づきにくいポイントですが、設置前に確認し、不安があれば相談したほうが安心です。
新規導入の場合は、設置場所の耐荷重も大切なチェック項目です。
重すぎて導入が難しいのであれば、サイズが小さな機械を複数入れて分散配置する方法もあります。
精密な機械であれば振動もトラブルの原因になり得ます。
事前に振動を計測し、問題があれば防振ゴムを入れる、場所を替える、カバーを付けるなどの対策を事前に提案して防ぐようにします。
水を扱う機械の場合、水漏れのリスクも想定する必要があります。
漏れないのが一番ですが、万が一何かあったときも階下や周囲に影響が出ないように対策します。
いざ機械を納入しようとした際、後から気づいて設置できないケースは少なくありません。
契約から納入までの期間で「この機械をどこからどう運べば入れられるか」を綿密にシミュレーションしてください。
トラックなどに積み込んで構内を移動するとき、積み込んだ機械の高さや幅で通過できるかを確認してください。
以前、ぶら下がっている電線を勝手に押し上げて通過したところ、工場全体の電気が止まってしまったケースを聞いたことがあります。
通行の障害があるときは必ず担当者に確認して当日までに通路を確保しましょう。
設置のために排気管を切断したところ、その管が実は隣の古い煙突を支えていたため、煙突ごと倒れてしまったという話もありました。
また排気のために壁や梁に穴を開けたら建物の強度が弱くなった、倒れてしまったというケースもあります。
設備に対して少しでも加工が必要になったら、判明時点で事前に工場の担当者に連絡し、本当に大丈夫か確かめてから実行してください。
本当は気づいていても、「お金がかかる」「交渉が面倒」「お客様に嫌われたくない」などの理由で疑問点を見逃していませんか。
営業としての理想は、お客様が安全に自社の機械を使い続けられることです。上記の言い訳で安全を手放してしまうと、お客様にも自分たちにも不利益が出るかもしれません。
むしろ、こういった環境を整える交渉はお客様から信頼を得られる大きなチャンスです。
事後ではなく予測して知らせることで、技術的な知識を持った営業として認めていただけるからです。
また、納入時は機械以外の環境まで改善しやすいタイミングです。
油まみれになってしまうなら近くに手洗い場を作る、点検がしにくいならランプを設置して確認しやすくするなど、利用者の不便をなくす視点でも環境を見直してみてください。現場担当者も改善の稟議を上げやすくなり、喜ばれます。
次の世代のために一歩前へ進みましょう。
皆様からのご連絡をお待ちしています