東京農工大学 | 合同会社AMU経営研究所

東京農工大学

大学が挑む、SAF社会実装への本気の構想

持続可能な航空燃料(SAF)の社会実装に向け、産学官の連携が加速しています。その中で、大学として先頭に立ち、研究開発のみならず事業開発や国際認証のルール形成にまで踏み込んでいるのが東京農工大学です。

今回、田中剛教授と村田智志特任助教に、大学発でSAFの社会実装を目指す取り組みの全体像と、その背景にある覚悟について伺いました。

事業の内容

東京農工大学では、日本学術振興会(JSPS)の「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」の採択を受け、SAFの社会実装を見据えた研究体制を構築しています。

その中核となるのが、持続可能な航空燃料に関する産学連携プラットフォーム「SAF OP」の設立です。これは単なる研究会ではなく、2030年の国産SAF実装を見据え、大学の知見を早期に企業と共有しながら、事業化までを視野に入れた枠組みです。

現在、エネルギー、商社、エンジニアリング企業など複数社が参画し、技術開発、原料確保、知財整理、ビジネスモデル構築までを議論しています。大学は技術の源泉としてだけでなく、知財戦略やルール形成のハブとしての機能を有しています。

さらに2024年度には、大学100%出資の子会社「Dejima Intelligence. 株式会社」を設立しました。これは大学がより主体的に事業開発へ関与するための仕組みであり、研究成果を社会実装へつなぐ新たなモデルです。

技術面では、HEFAを主軸とした植物油脂由来SAFの原料開発に取り組んでいます。とくに非食用油糧作物「ポンガミア」に着目し、食料との競合を避けつつ、乾燥地でも栽培可能な特性を活かした供給モデルを構想されています。

取組まれた背景

背景にあるのは、2030年に国内航空燃料の10%をSAFへ代替するという国家目標です。現状では、原料調達、サプライチェーン構築、国際環境認証取得と、すべての段階に課題が存在します。

田中教授は、これらを単独企業で解決することは困難であり、大学が知のプラットフォームとして機能する必要があると語っておられます。研究だけでなく、制度設計や国際認証の議論にも関与しなければ、本当の意味での社会実装は進まないという問題意識です。

また、学内改革の流れも大きな要因になります。学長のリーダーシップのもと、研究成果を社会へ実装する大学への転換が進められてきました。SAFはその象徴的プロジェクトといえます。

村田特任助教は、大学と民間企業、さらに政策のスピード感の違いの間に立ち、調整役を担っています。投資判断、リスク分担、事業化の現実と向き合いながら、研究を社会の文脈へ翻訳する役割です。見込みのある企業へアポを取り訪問し、学術界から直接的に参画を促すなど交渉役を担っておられます。

現在の取組状況

ポンガミアについては、沖縄県で約40アールの試験栽培を実施しています。約400本を植栽し、国内環境下での適応性を検証しています。

同時に、府中キャンパス内の植物工場では、光・温度・湿度を完全制御した環境下で亜熱帯条件を再現し、栽培データを蓄積。

研究体制も強化され、微生物活用、剪定技術、油脂生産性向上など、多面的なアプローチが進んでいます。また、特許調査を通じて技術ポジションを整理し、戦略的な研究開発を展開されています。

特筆すべきは、CORSIA認証への直接的関与です。国土交通省の委託を受け、国際民間航空機関の専門家タスクに参加し、新規原料の認証ルール形成にも関与しておられます。

単に認証を取得する立場ではなく、制度設計そのものに貢献され、日本のSAF戦略の一翼を担っておられます。

今後の課題

最大の課題は、投資判断の壁です。技術的可能性が見えても、商業規模でのFIDに至るには、リスク低減策と収益性の裏付けが必要です。

企業側は十分な制度的確実性を求め、制度側は実績データを求めるという構図が生まれています。大学はその間で、知的基盤を整え、リスクを一部引き受けながら前進する役割を担っています。

また、国際認証の交渉、ルール形成、人材育成など、従来の大学教員の枠を超える業務が増えています。事業と研究を両立できる博士人材の育成も重要なテーマです。

サプライチェーンの皆様へ

今回のインタビューから明確になったのは、東京農工大学が単なる研究機関ではなく、SAF社会実装のハブとして動いているという事実です。

原料生産、栽培実証、油脂抽出、精製、流通、認証、投資、金融。どの工程も単独では成立しません。大学は知を集約し、構造化し、共有する場を用意しています。あとは、それぞれのプレイヤーが自らの役割を持ち寄ることです。

サトウキビを含む甘味資源作物、非食用油糧作物、バイオマス、副産物活用。日本発のSAFサプライチェーンを築くために、いま参画する意義は大きいといえます。

「2030年は遠い未来ではありません。社会実装は、すでに始まっています。」

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

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