沖永良部島でさとうきびが栽培されたのは約200年前といわれている。昭和30年頃には日本の大手商社が南西諸島における黒糖生産に乗り出したが、昭和37年に一島一社体制の行政指導を受けたことから、沖永良部島では和泊町の奄美興発株式会社と知名町の共和産商株式会社が合併して、南栄糖業株式会社が設立された。
さとうきびは沖永良部島の基幹産業であり、生産者、JA、行政、製糖会社、沖永良部農業開発組合を中心とする受託組織、関係機関それぞれが連携し、協力している。かつては、通称ハリガネムシによる害虫被害で大きく生産量が減り、さとうきび産業存続の危機に立たされる局面もあったが、それを島全体で一丸となって乗り越え、現在では、皆がさとうきび産業を支える共通認識を持っていることが沖永良部島の特色といえる。
その中で当社はさとうきびを原料とする粗糖の製造を行っている。島内のさとうきびが収穫される12月から4月までは、24時間体制による操業で粗糖を製造し、製糖が終わる5月以降は、機械の部品をすべてはずして、自分たちの手で一つ一つ点検、修理する。設立当初から工場が必要とする電力と蒸気はすべて、圧搾工程で排出されるバガスを燃焼して得られるバイオマス発電でまかなっている。
脱葉処理で出るハカマ(夾雑物)は有機たい肥原料、余剰バガスは畜産の敷料、清浄工程で出るライムドケーキは有機たい肥の発酵助剤として活用し、ゼロ・エミッションで粗糖を製造することに力を入れている。
現在、さとうきびの年代別生産者数は、70~75歳にピークがあり高齢化が加速している。さとうきび以外の作物の生産者も同様であると考えられるが、さとうきび以上に労力が必要なことからさとうきびに転作する高齢者もおり、近年さとうきび耕作面積が少しずつ増えている要因のひとつと考えられる。また、ハーベスターオペレータの高齢化とハーベスター自体の老朽化も進んでおり、後継者育成や機械更新は途上である。当社においても同様で、高齢となった季節従業員が次年度に来なくなるということが毎年起きている。
さとうきび生産者は家族経営がほとんどだが、一部の大規模農家は外国人労働者の受け入れで対策している。ハーベスターを所有する大規模農家では、補助員確保に苦労しており、数年前よりコストをかけてでも島外からの労働者の受け入れを始めている。当社でも季節従業員の不足が一気に顕在化しており、業務を効率化することにより、従来よりも少ない要員で操業することに力を注いでいる。令和7年製糖期では初めて外国人労働者3名を受け入れた。
高齢化や人手不足を補うものとして、農作業の機械化は必須である。沖永良部島ではトラクターをはじめとする一般的な農作業機械の導入は他島と比べて進んでいる一方で、老朽化が進んでいて、機械更新を必要とする生産者が多く存在するのが現状である。
また、ハーベスター、ビレットプランター等の大型機械や、自動操舵等のスマート農業機械は高額なことから、大規模農家や受託組織での導入が中心となるため、これらの人々による受託体制の整備が高齢化・人手不足への対策として必要である。沖永良部島では前出の沖永良部農業開発組合が受託組織の核としてあるが、人手不足等により運営が厳しい状況にあり、その立て直しが急務となっている。
さとうきびの生育は気候に大きく影響を受け、10aあたり収量は4,500㎏から6,000㎏と年によって大幅に変動する。生産者の収入に直接関わり、単収の安定と向上は第3期さとうきび増産計画(令和8年度~令和17年度)の重要な目標としている。気象要因としては、気温、日照、降水量、台風による潮風害などがあるが、特に梅雨明け以降の干ばつによる生育への影響は非常に大きい。地下ダム、ため池からの水供給インフラの有効活用は大きな効果をもたらすが、散水器具や利用料など運用制度の問題や水利用の意識づけの問題などから、まだ十分に利用されていない現状がある。
沖永良部島にとって、さとうきびは生産者や製糖会社だけでなく、それを取り巻く様々な関係者(輸送業、土木建設業、設備工事業、機械整備業、燃料販売業、季節労働者等)が協力して成り立つ基幹産業であることから、島を支える作物としてさとうきびを維持するために努力するという価値観を共有している。この視点で活動を推進することが、社会貢献につながっていると考えている。
サステナブルな航空機燃料としてSAFは知っているが、沖永良部島においては、残念ながら具体的な計画はない状況である。SAFの原料としての糖蜜利用は魅力的で、高付加価値な原料として利用できれば、近年、問題になっている製糖副産物処理の解決にもつながる。
ここ数年はさとうきびの生産が高水準な状況が続いているが、沖永良部島のさとうきび増産計画においては、生産者の高齢化・人手不足等が見込まれることから耕作面積は若干減っても、少ない人手で効率の良い農作業により単収を上げて、10年後も生産量を維持することを目標としている。その中で、さとうきび由来のSAF製造のような新たな価値を創造することは重要で、今後取り組む必要があると考えている。
※南栄糖業株式会社作成
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