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東京都が挑むSAF社会実装 国産燃料と航空貨物から進む脱炭素

航空分野における脱炭素化は、もはや将来の選択肢ではなく、今まさに取り組むべき経営課題となっています。特にSAF(持続可能な航空燃料)は、航空機の構造を大きく変えることなくCO2排出量を削減できる現実的な手段として注目されています。こうした中、東京都産業労働局は、全国に先駆けてSAFの社会実装を後押しする二つの支援事業を展開しています。

本記事では、東京都産業労働局へのインタビューを通じて、国産SAF利用促進事業と、企業のScope3対応に向けた航空貨物輸送でのSAF活用促進事業の狙いと背景、そして企業や物流現場にとっての意味をひも解いていきます。

国産SAF利用促進事業が目指すもの

国産SAF利用促進事業は、羽田空港において航空会社へ国産SAFを供給する都内事業者を対象に、国産SAFと海外産SAFとの価格差を東京都が補助する制度です。現状では、海外産SAFの方が価格面で優位にあり、航空会社が海外産を選択しやすい構造があります。このままでは国産SAFの市場が育たず、国内の技術や供給体制が衰退しかねません。

東京都では、こうした状況を踏まえ、価格差というハードルを行政が補完することで、国産SAFが選ばれる環境を整えています。その背景には、東京の国際競争力の強化、SAFの安定的な供給体制の構築、そして関連市場の発展という三つの目的があります。国が掲げる2030年時点での航空燃料10%をSAFに置き換える目標や、東京都が策定した2050東京戦略とも軌を一にする取組です。

Scope3に踏み込んだ航空貨物向けSAF支援

もう一つの事業が、企業のScope3対応に向けた航空貨物輸送でのSAF活用促進事業です。こちらは令和6年度からスタートしており、SAFを使用した航空貨物輸送によって発生する追加料金を東京都が補助する仕組みです。

近年、企業の脱炭素対応は、自社の製造工程や事業活動にとどまらず、サプライチェーン全体、いわゆるScope3まで含めた対応が求められています。物流分野の中でも、航空輸送はCO2排出量が相対的に大きく、対策の余地が大きい分野です。東京都はこの点に着目し、荷主企業がSAFを活用した航空貨物輸送を選択し脱炭素化に取り組むことを支援するため、追加コスト部分を支援しています。

この制度は、貨物代理店が荷主に対して、SAFを活用した航空貨物輸送を提案し、通常の航空貨物輸送との差額部分を東京都が補助する形で運用されています。制度が成立する前提として、環境価値の販売会社、貨物代理店及び荷主などのサプライチェーンを構成する関係者の理解が不可欠であり、普及啓発が重要なテーマとなっています。

東京都と貨物代理店は連携しながら、3月末まで普及啓発に注力している状況です。セミナーやシンポジウムでの情報発信、荷主企業への直接的な提案を通じて、SAFを活用した輸送の選択肢を広げています。

東京から全国へ広がる可能性

これら二つの事業に共通するのは、単なる環境施策にとどまらず、企業の行動変容を促す実践的な仕組みである点です。国産SAFの利用促進は、国内産業の育成とエネルギー安全保障にもつながります。また、Scope3に踏み込んだ航空貨物支援は、物流を含めた企業の脱炭素経営を具体的に前進させる後押しとなります。

東京都は、2050東京戦略のもと、住みやすく、働きやすく、国際競争力の高い都市を目指しています。SAFを軸としたこれらの取組は、その戦略を現場レベルで具現化するものと言えるでしょう。航空、物流、製造、エネルギーといった多様なプレーヤーが関わるSAFサプライチェーンにおいて、東京都の挑戦は今後、全国の自治体や企業にとっても重要なモデルとなっていくはずです。

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

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