新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) | 合同会社AMU経営研究所

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

  • 従業員数1565名(2025年4月1日現在)
  • 予算規模1,464億円(2025年4月時点)※基金を除く
  • 基金事業予算10兆4,049億円(2025年4月時点)

SAFの技術開発~
社会実装を支える中核機関

1.インタビューの背景

近年、持続可能な航空燃料(SAF)は、航空分野における脱炭素の切り札として、世界的に注目を集めている。とはいえ、SAFは単なる燃料技術ではなく、原料調達から製造、認証、供給、利用に至るまで、いくつもの段階が連なって初めて成立するエネルギーである。

こうした中で、日本ではどのようにSAFの研究開発が進められ、どこまで社会実装が見えてきているのか。その全体像を理解することは、SAFサプライチェーンへの参画を検討する多くの関係者にとって、大きな関心事となっている。

本インタビューでは、日本のSAF開発を長年支えてきたNEDO再生可能エネルギー部バイオマスユニット ユニット長 矢野貴久氏に、現在の取組状況や、その背景にある考え方について話を伺った。

2.NEDOにおけるSAF支援の基本姿勢

NEDOは、エネルギー・環境・産業技術分野において、基礎研究から応用研究、実証研究までを一貫して支援してきた組織である。SAF分野においても、その姿勢は変わらず、特定の技術や原料に絞るのではなく、将来の選択肢を広く残す形で支援が行われている。

特に近年は、研究室レベルの成果にとどまらず、実際の社会で使われる段階を意識した実証や商用化に近いフェーズへの支援が中心となってきた。
単に技術として成立するかどうかではなく、「空港まで燃料を届け、航空機で使われるところまで含めて初めて意味がある」という考え方が、取組の根底にある。

3.多様な原料・多様な製造プロセスへの支援

SAFは、ひとつの原料や製造方法だけで成立するものではない。そのためNEDOでは、複数の技術ルートを並行して支援する形が取られている。
現在、比較的商用化に近い技術として挙げられるのが、廃食用油を原料とするHEFAプロセスである。国内でも実証段階を迎え、実際の生産が始まった事例が現れつつあり、日本におけるSAF導入の先行モデルとなっている。

一方で、将来的な需要量を考えると、廃食用油だけでは十分とは言えない。
そのため、NEDOではエタノールを原料とするアルコール・トゥ・ジェット(ATJ)技術にも力を入れている。
トウモロコシやサトウキビといった第1世代原料由来のエタノールを用いた大規模実証に加え、パルプや建築廃材など、セルロース系原料からエタノールを製造する技術についても、パイロット段階での支援が進められている。

さらに、バイオマスをガス化しFT合成によってSAFを製造する技術や、CO2と再生可能エネルギー由来水素を用いた合成燃料の開発なども対象となっている。
こうした幅広い支援は、将来の原料制約や国際競争を見据えた、いわば「備え」としての意味合いも持っている。

様々な原料からのSAFへの変換プロセス

4.国内に広がりつつあるSAF製造拠点構想

2030年前半に向けて、日本国内では複数の大規模SAF製造拠点が計画されている。NEDOが技術開発を支援してきた案件に加え、GX政策の流れの中で、経済産業省による設備投資支援も進み、数万キロリットルから数十万キロリットル規模の構想が各地で検討されている。

もっとも、これらの施設が実際に建設され、稼働に至るかどうかは、各事業者の最終的な判断に委ねられている。その判断を大きく左右するのが、SAFと従来型ジェット燃料との価格差を、誰がどのような形で負担するのかという制度のあり方である。

現在、国土交通省、経済産業省、航空会社、石油事業者の間で議論が続けられており、関係者が納得できる形での合意形成が、今後の鍵を握っている。

5.原料確保と認証という現実的な課題

SAFの社会実装を考える上で、避けて通れないのが原料確保の問題である。廃食用油は非常に優れた原料である一方、その量にはどうしても限界がある。そのため、未利用バイオマスや農業資源を含め、原料の幅を広げていくことが欠かせない。

また、製造された燃料を航空機で使用するためには、CORSIAに基づく持続可能性認証や、ASTM D7566といった燃料品質規格への適合が求められる。
NEDOは主に原料調達から製造工程までを支援しているが、こうした出口側の認証や制度対応についても、関係省庁や事業者と連携しながら、実務的な後押しを行っている。

6.サトウキビを含む農業資源への示唆

航空分野では、2035年までにCO2排出量を2019年比で大きく抑制するという国際的な目標がすでに共有されている。その達成に向けて、SAFが担う役割は今後ますます大きくなると考えられている。

2050年に向けては、航空燃料の相当部分をSAFで賄うことが想定されており、現在の生産規模からは大幅な拡大が求められる。その中で、安定的に供給可能な農業資源であるサトウキビは、エタノール原料として、また将来の多様な変換技術の起点として、現実的な選択肢の一つとなり得る。

NEDOの取組は、単なる技術開発支援にとどまらず、原料、製造、制度、認証といった要素を横断的に捉え、社会実装に向けた知見を積み重ねてきた点に特徴がある。

SAFサプライチェーンへの参画を検討する組織にとって、NEDOの情報は全体を俯瞰し、具体的な道筋を考える上での大きなヒントとなるだろう。

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

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