東洋エンジニアリング株式会社 | 合同会社AMU経営研究所

東洋エンジニアリング株式会社

  • 従業員数約6,000名
  • 資本金180億円
  • 売上高約3,000億円
    (2024年3月期)

事業の内容

1961年に東洋高圧工業(現在の三井化学)の工務部門から独立して創業した東洋エンジニアリング株式会社は、総合エンジニアリング企業として化学・エネルギー・産業インフラなど幅広い分野のプラントを手掛けている。主要事業はエチレン、アンモニア、肥料、ガスプロセッシング、石油精製といったプロセス系プラントに加え、発電、医薬品などの産業インフラ分野にも及ぶ。

近年では、従来のEPC(Engineering、Procurement、Construction; 設計・調達・建設)事業にとどまらず、新たな事業領域の創出にも注力しており、そのうちのテーマの一つが、持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)を中心とする合成燃料技術の開発である。

取組まれた背景

SAFへの関心が高まった背景には、国際民間航空機関(ICAO)による温暖化ガス削減方針がある。航空機のCO₂排出量を2050年までにネットゼロとするため、航空技術・運航改善・燃料転換の三位一体による削減策が進められており、2050年に向けてSAFの比率を飛躍的に高めることが求められている。東洋エンジニアリングではこの世界的な潮流をビジネスチャンスと捉え、自社の得意領域である合成技術を応用してSAF製造に挑戦してきた。

同社が得意とするのは、木質バイオマスや都市ごみなどをガス化した合成ガス(一酸化炭素と水素)から燃料を生成するFT(フィッシャー・トロプシュ)合成技術である。この技術は第二次世界大戦期にドイツで開発され、日本でもかつて軍用燃料製造を目的に研究された歴史がある。同社は2007年から米国ベロシス社のマイクロチャネルリアクター技術を導入し、中小型プラント向けのGTL(Gas To Liquid)技術として共同開発を進めてきた。

当初は海底油田開発船(FPSO)で発生する随伴ガスを液体燃料化する目的で開発を始めたが、原油価格の変動や設備制約により実用化には至らなかった。しかし環境価値が重視される現代において、木質バイオマス、都市ごみ、排ガスなどから合成燃料を製造できる技術として、同技術が再び脚光を浴びている。

米国ベロシス社の技術を導入した中小型プラント向けのXTL技術開発

図 米国ベロシス社の技術を導入した中小型プラント向けのXTL技術開発
出典:東洋エンジニアリング株式会社 ニュースリリース

同社はこれまで、さまざまな技術開発を手掛けてきたが、外部環境の変化により、幾度もプロジェクトが中止を余儀なくされてきた。それでもなお、技術の蓄積を続け、粘り強く長期にわたり取り組み、技術の活用先を模索している。こうした技術者の忍耐強さと闘志は、まさに日本のものづくりを支える大きな財産である。

現在の取組状況

東洋エンジニアリングは、三菱重工業、JERA、JAXAとともにNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の実証事業に参画し、木質バイオマスを原料としたSAF製造実証プラントを構築した。三菱重工がガス化設備を担当し、東洋エンジニアリングは合成ガスの前処理、FT合成、燃料精製(アップグレーディング)を担った。2021年には同プラントで生産したSAFを実際に旅客機に搭載し、フライトに成功している。

この実証は国内初の木質バイオマス由来一貫製造SAF供給として注目されたが、当時は原料コストや支援制度の不足により事業化には至らず、プロジェクトは終了した。しかしNEDOの後押しを受け、コスト削減や技術改良の検討を継続し、さらに2025年度からは都市ごみ等原料を拡大する新たな調査プロジェクトにも着手している。これにより、より広範な資源の活用可能性を探るとともに、社会システム面の課題解決を模索している。

さらに日揮ホールディングスとのアライアンスを通じ、国内SAF製造プラントのEPCで協業し、両者の技術と実績を融合して提案力・競争力を強化、日本の脱炭素社会とSAF普及に貢献する連携体制を構築している。

今後の課題

SAFの商用化における最大の課題は、安定的な原料供給とサプライチェーン構築である。木質バイオマスや農業残渣、都市ごみ、汚泥など、利用可能な原料は多様だが、地域ごとの回収・輸送・処理の仕組みが確立しておらず、コスト面でも依然として石油由来燃料に比べて高い。技術的には実証済みであるものの、社会制度面の整備、特に支援システムの確立が不可欠だと同社は指摘する。

また、原料の分散性や行政区分の壁により、都道府県をまたいだ廃棄物移動が難しいといった構造的課題もある。これらを乗り越えるためには、国・自治体・企業が連携し、資源循環と地域経済を一体化した新しいサプライチェーンモデルを構築する必要がある。

東洋エンジニアリングは今後も、技術開発と社会実装の両輪でSAFの実用化を目指す方針だ。技術的には数百バレル/日規模のプラント建設に対応可能な段階にあり、あとは経済性を確立する仕組みを社会全体でどう支えるかが焦点となる。

企業理念と展望

同社の企業理念には「エンジニアリングで地域と社会のサステナビリティに貢献する」という言葉が掲げられている。創業以来、肥料工場を建設し、地域社会に雇用と産業を生み出してきた経験が「地域の発展を技術で支える」というDNAとして受け継がれている。最近では「持続可能な発展」という視点が加わり、環境と経済の両立を目指す姿勢が明確に示された。

EPC事業(設計・調達・建設)を中心に発展してきた同社は、現在、非EPC事業の比率拡大にも取り組んでいる。プラント建設だけでなく、運転・保守やデジタル技術を活用したDXプラントの運用支援など、持続的に価値を提供できる事業構造への転換を進めている。これにより事業の波を抑え、安定した雇用と技術継承を実現する狙いだ。

まとめ

東洋エンジニアリングのSAFへの挑戦は、単なる技術開発ではなく、社会システム全体の変革を見据えた試みである。FT合成や更にはメタノール合成といった長年培ったプロセス技術を基盤に、再生可能資源やCO₂の再利用による新たな燃料生産に挑み続けている。その根底には「技術で地域を支える」という創業以来の使命感がある。

今後、同社の技術がサトウキビや農業残渣など日本各地のバイオマスと結びつくことで、地域資源を活かしたSAFサプライチェーンの実現に向けた道がさらに広がっていくことが期待される。

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

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