木村化工機株式会社 | 合同会社AMU経営研究所

木村化工機株式会社

  • 従業員数411名
  • 資本金10億3,000万円
  • 売上高25,500百万円

技術の蓄積と挑戦が導く「第2世代バイオエタノール」への道

特徴:自社一貫体制が支える品質と信頼

創業から100年以上にわたり、化学プラント設備・機器の建設工事およびメンテナンスや、原子力を含むエネルギー・環境関連機器の開発から設計・製造・据付・試運転・メンテナンスなどのエンジニアリングを担ってきた木村化工機株式会社。
エンジニアリング事業部では、顧客の要望に応じたオーダーメイド型の化学装置・プラントを提供しており、基礎設計から製造・据付・試運転に至るまで完結できる体制を整えている。
また、自社の製缶工場を有していることから、機器の品質保証と機密保持の両立を実現している点が同社の大きな強みだ。

同社の事業の核は「顧客の要求を保証する」ことにある。量産品ではないプラント設備は、すべてが一品一様。数年から十数年にわたる長期運転を前提とするため、保証には高度な設計力と実証データが不可欠である。
担当者は「顧客の要求を満たすことがエンジニアリング会社の責務であり、最も難しい部分でもある」と語る。
信頼を支えるために、自社内でテスト設備を整え、設計データの取得から評価までを自ら行う体制を貫いている。

きっかけ:省エネ技術と水熱技術が開く新たな可能性

こうした姿勢の根底にあるのが、省エネルギー技術へのこだわりだ。木村化工機のエンジニアリング事業部では、省エネを軸とした蒸発・濃縮・蒸留設備の開発に力を注いできた。
これはエタノールを燃料化する際の蒸留工程にも共通する技術領域であり、同社では数年前から「SAF(持続可能航空燃料)への技術的貢献」の可能性を模索している。
エタノールを99.5%まで精製する過程で生じる大量のエネルギー消費を、いかに抑制できるか。その課題に対して、省エネ型の蒸留技術を活用できるのではないかと考えているという。

省エネ型のヒートポンプ式バイオエタノール蒸留装置イメージ

出典:省エネ型のヒートポンプ式バイオエタノール蒸留装置イメージ 木村化工機(株)2024年11月20日News Release

さらに、同社は「水熱技術」と呼ばれる有機物の高速加水分解技術も有しており、セルロースなどの難分解性性バイオマスを効率的に処理する手法として注目している。
サトウキビの搾りかす(バガス)や農業残渣などのセルロース系資源を燃料化する「第2世代バイオエタノール」においては、この前処理工程が大きな鍵を握る。
担当者は「蒸留工程だけでなく、原料の分解過程でも当社の技術が貢献できる可能性がある」と展望を語る。

課題:農業分野との連携が生む新たな挑戦

ただし、サトウキビを原料とするSAFへの取り組みについては、慎重な立場を取っている。砂糖の原料として流通しているサトウキビをエネルギー用途に転用することは、食料との競合を生むからだ。
そのため同社は、よりエネルギー作物として適した「ソルガム(高バイオマス量のイネ科モロコシ属の植物)」に注目している。しかし、農業分野との連携や原料の安定調達には多くの課題がある。
「我々は農業分野にノウハウを持たない。今後は農業関係者や研究機関と協力していく必要がある」と担当者は話す。

また、SAF開発において重要なのは「失敗の共有」だと同氏は強調する。かつて環境省が主導したセルロース系エタノール実証事業では、多くの企業が課題に直面したが、その成果や失敗の要因が十分に公開されなかったと振り返る。
「技術者にとって失敗こそ次の財産。目標を達成できなかった理由を記録し、公開することが次世代の技術発展に不可欠だ」との言葉には、長年現場で積み重ねてきた経験から生まれた重みがある。

提言:失敗の蓄積が未来をつくる

担当者自身も、若手時代の失敗から多くを学んだという。そうした経験が、今日の品質保証体制を支えている。「技術者は誰もが失敗を経験する。それをデータベース化し、次に活かす仕組みをつくるべきだ」と担当者は語る。特に、補助金を用いた公的研究であれば、その知見を社会全体で共有する責任があるという指摘は示唆に富む。

サトウキビをはじめとするバイオマス資源からの燃料化は、量的には日本のエネルギー需要全体を賄うには到底及ばない。しかし、同社がこの領域に関心を持ち続ける背景には、「技術を自国に残す」という強い信念がある。
「将来的には海外から燃料を輸入する形になるだろうが、日本が独自技術を持つことで、エネルギー安全保障の面で優位に立てる。自国で自給できる技術を磨くことこそが重要だ」と担当者は語る。

展望:利益を超え、日本の技術を守る

木村化工機の挑戦は、単なる事業拡大ではない。日本の産業技術を次世代へとつなぐ「知の蓄積」としての意義を持つ。同社が掲げる「利益よりも日本の技術を守る」という信条は、SAFという新領域にも確かな方向性を与えている。
今後、農業・化学・エネルギーといった異分野の連携が進む中で、木村化工機の技術がどのように進化し、どのような形でサプライチェーンに組み込まれていくのか。
その歩みは、地域と産業の未来を見据えた挑戦の象徴といえるだろう。

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

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