農研機構 九州沖縄農業研究センター様 | 合同会社AMU経営研究所

農研機構 九州沖縄農業研究センター

農研機構 九州沖縄農業研究センター(九沖農研)について

【取材協力】  九沖農研 暖地畑作物野菜研究領域
カンショ・サトウキビ育種グループ
種子島調整役 樽本 祐助 氏
上級研究員 服部 太一朗 氏
研究員 梅田 周 氏

九州沖縄農業研究センターについて

九州沖縄農業研究センター(以下、「九沖農研」)は、農林水産省所管の研究機関が統合され設立された農研機構(「国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構」のコミュニケーションネーム)を構成する、5つある地域農業研究センターの1つです。
農研機構は2001年(平成13年)に独立行政法人として発足し、2016年(平成28年)に、現在の国立研究開発法人となりました。農研機構は農業と食品産業の発展のため、基礎から応用まで幅広い分野で研究開発を行う機関です。
研究開発の成果を社会に実装するため、国、都道府県、大学、企業等との連携による共同研究や技術移転活動、農業生産者や消費者への成果紹介も積極的に進めています。

九沖農研の前身は、1950年(昭和25年)4月にいくつかの試験場が統合してできた農林水産省(当時は農林省)九州農業試験場です。統合された試験場は、1892年(明治26年)に設置された農商務省農事試験場の九州支場(福岡県羽犬塚町)を筆頭に、同種子島試験地(鹿児島県西之表町)、同指宿試験地(鹿児島県指宿町)、畜産試験場九州支場(熊本県西合志村)、園芸試験場九州支場(福岡県久留米市)、開拓研究所九州支所(鹿児島県霧島村)、同干拓支所(佐賀市)、二日市農事改良実験所筑後試験地(福岡県羽犬塚町)、福岡県農事試験場筑後分場(福岡県羽犬塚町)でした。
その後、農林省農事改良実験所の一部組織や蚕糸試験場の統合、あるいは、九州農業試験場からの分離など、再編が続きました。

2001年(平成13年)4月、中央省庁等改革の一環として、国の試験研究機関は独立行政法人に移行しましたが、その中で九州農業試験場は野菜・茶業試験場久留米支場との統合が図られ、農業技術研究機構の一機関として九沖農研が発足しました。
さらに、2016年(平成28年)4月の再編で、九沖農研ーに果樹研究所カンキツ研究部口之津拠点が組み入れられました。

九州沖縄地域は、概して気温が高く豊富な日照と降雨に恵まれているため、作物を栽培できる期間が長いなど農業生産に適しています。
九沖農研では、暖地畜産研究領域、暖地畑作物野菜研究領域、暖地水田輪作研究領域の3つの研究領域があり、暖地畑作物野菜研究領域のもとにカンショ・サトウキビ育種グループが組織されています。

九沖農研は熊本県合志市の本部・合志研究拠点を中心に7つの研究拠点があり、サトウキビについては種子島拠点(鹿児島県西之表市)と糸満駐在(沖縄県糸満市)で研究活動を行っています。

  • サトウキビ栽培ほ場(種子島拠点)
    サトウキビ栽培ほ場(種子島拠点)(九沖農研ホームページより)
  • 糸満駐在(沖縄県農業研究センター内)
    糸満駐在(沖縄県農業研究センター内)

九沖農研のサトウキビ研究

カンショ・サトウキビ育種グループでは、種子島研究拠点で、南西諸島の基幹作物であるサトウキビの新品種開発を主軸とした、サトウキビに特化した研究を実施しています。糸満駐在ではサツマイモの育種に関する研究を中心に、沖縄県との連携のハブとして、サトウキビの評価と普及の支援を行っています。

種子島研究拠点は、南西諸島の北限に位置し、生育温度の点でサトウキビ栽培には厳しい条件にあり、より温暖な南方に比べて収量や品質(ショ糖含量) が劣ります。
こうした厳しい環境は品種開発にとっては逆に極めて望ましい条件であり、低温条件下においても生育が優れる品種の選定や、糖分上昇が早い品種の選定などに適しています。
こうした地の利を活かし低温伸長性に優れる高品質品種開発に取り組んでいます。

世界各地から導入したサトウキビ品種や、日本国内を中心に収集されたサトウキビ野生種を保存、活用して品種改良に利用しています。南西諸島向け製糖用品種の開発を中心的な研究として取り組んでいるほか、その将来的な発展を目指した次世代型品種開発に取り組んでいます。

近年では、国立研究開発法人国際農林水産業研究センター(以下、「JIRCAS」)と共同で、収量増加と農作業軽減に寄与する「機械収穫下での株出し多収性」を実現する「はるのおうぎ」を開発しました。

種子島では長期にわたって「農林8号」が主要品種でしたが、農業労働力が減少する中、サトウキビ経営の大規模化や収穫の機械化などの変化が進行し、初春の株出し作業が十分に実施できないため萌芽不良を引き起こし、単収の減少を助長する状況が生じていました。
初春は収穫と植え付け作業が重なるため、株出し管理の遅れや株出しでのマルチ未設置の常態化、機械収穫時の株引き抜きによる損傷や欠株の増加、新植する余力がないためやむを得ず株出しを続けざるを得ないほ場が増加するなどの問題が生じていました。
そのため、「農林8号」に代わる、株出し多収かつ機械収穫しやすい新たな品種に対するニーズはこれまでになく高まっていました。そこで、収量性に極めて優れる新品種「はるのおうぎ」を育成し、2022年から普及を始めました。

「はるのおうぎ」は、2008年12月から交配を開始、2009年度から交配種子を種子島研究拠点のほ場で播種、その翌年からから選抜試験を開始しました。
2015年度から、鹿児島県農業開発総合センターおよび沖縄県農業研究センターの協力を得て系統適応性検定試験や黒穂病抵抗性の特性検定試験を行ってきました。2017年度から熊毛・奄美地域を対象に、2018年度からは沖縄県全域も対象に加えて、各地で栽培試験を行いました。
その結果、熊毛地域(種子島)での成績が群を抜いて良好でしたので、2019年3月に「はるのおうぎ」としてJIRCASと共同で、品種登録出願を行い、2019年8月に熊毛地域(種子島)の奨励品種に選定されました。

「はるのおおぎ」は葉の緑色が濃く、茎径は細く茎数が多いといった形態的な特徴があり、収穫後の切り株から芽吹く「株出し」の萌芽が極めて多いという特徴を持ちます。糖分含量は「農林8号」と同程度で、既存品種より耐倒伏性があり、収穫がしやすいです。
一方で、脱葉性や黒穂病抵抗性にはまだ課題があると言えます。

「はるのおうぎ」は、従来の製糖においてバガスと呼ばれる副産物として扱われていた繊維分の割合が多く、バガスも増産されることになります。
このバガスを活用して、バイオ燃料やバイオ由来の素材といった新たな付加価値を生み出すことができれば、食料増産と脱化石資源化を同時に実現できるようになると考えられます。種子島では、製糖企業の協力や生産者の理解もあって「はるのおうぎ」の普及が進んでおり、サトウキビ生産の持続性に貢献しはじめています。

  • はるのおうぎの普及が進む種子島のサトウキビほ場
    はるのおうぎの普及が進む種子島のサトウキビほ場
  • サトウキビの搾りかす「バガス」
    サトウキビの搾りかす「バガス」

今後の方向性について

九沖農研では、東京大学が代表機関を務める科学技術振興機構・共創の場形成支援プログラム(JST・COI-NEXT)「ビヨンド・“ゼロカーボン”を目指す“Co-JUNKAN”プラットフォーム」研究拠点(以下「Co-JUNKANプロジェクト」)に参加し、地域資源を好循環・高度利用することにより地域課題の解決につなげる取り組みに協力しています。

このうち、「食品生産と生態系保全を強化するGX技術の実証・社会実装」の研究グループは、種子島でのバイオ燃料製造の実証研究において、種子島産の製糖工場から副生するバガスや木質チップ等を原材料として、バイオ燃料やグリーンケミカルなど温室効果ガス排出削減に繋がるような高付加価値製品を製造する技術開発を進めています。

地域の基幹産業であるサトウキビ・製糖産業に高付加価値製品を作る新たなオプションを加えることで、基幹産業の強化を図り、地域の新たな雇用創出や持続的な農林業の実現を目指しています。
このような取り組みの中で、サトウキビ野生種等の野生遺伝資源を育種利用して開発する同様の品種は、サトウキビの生産性向上や製糖産業でのバイオマスエネルギー、バイオ化学製品の増産を目指すアジア地域での利用が期待されます。

また、2024年7月にインドのコインバトールで開催された、サトウキビの国際学会ISSCTワークショップで、梅田研究員が発表した「Distribution of Smut Disease Resistance Marker and Brown Rust Disease Resistance Marker (Bru1) in Sugarcane Breeding Materials of KARC/NARO(九沖農研のサトウキビ育種素材における黒穂病抵抗性マーカーと褐さび病抵抗性マーカーの分布)」が最優秀発表賞(ISSCT 13th Germplasm & Breeding/ 10th Molecular Biology Workshop Award for Best Presentation)を受賞しました。

本研究は、サトウキビの重要病害である黒穂病とさび病の抵抗性品種の開発に関わるDNAマーカーに関する研究です。
黒穂病とさび病は、世界中のサトウキビ生産地域で発生が確認されている重要病害です。

国内においても、今年になって奄美地域で黒穂病の発生が、昨年より種子島でさび病の発生が問題になっています。
そこで、梅田研究員は国内野生種「西表8」から黒穂病抵抗性DNAマーカーを開発し、品種育成に活用しています。

本研究では、黒穂病抵抗性DNAマーカーが遺伝的に特徴のある一部の国内野生種において検出されることを明らかにするとともに、 海外で報告されている褐さび病抵抗性DNAマーカー「Bru1」が、国内でも選抜に使用できることを明らかにしました。

九沖農研では、サトウキビ産業の持続的な発展に貢献する新品種の開発において重要となるキーテクノロジーの開発と、それを活用とした新品種開発に今後も注力していきます。

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

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