本レポートでは、魚谷鉄工株式会社様へのインタビューで伺った具体的な事業内容についてまとめています。
1922年に営業を開始し、1959年に会社設立。農業、林業機械等の設計から製造、販売までを一貫して同社内で行っています。
そんな彼らに、事業に対する想いや持続可能な航空燃料(SAF)ついてお聞きしました。
企業名 | 魚谷鉄工株式会社 |
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所在地 | 奈良県五條市犬飼町35番地 |
創業年 | 1922年9月 |
従業員数 | 30名 |
魚谷鉄工は奈良県に本社、沖縄県に2つの営業所を構えています。サトウキビ収穫用の農機であるシュガーケーンハーベスタ(以下、ケーンハーベスタ)などを取り扱っており、関連の機械や装置で数多くの特許・実用新案を登録している魚谷鉄工は、沖縄の製糖産業を支える存在です。
創業当時、本社のある奈良県五條市の付近が林業地帯であることから、林業機械の製造を行っていた同社。クレーンを取り扱う中で、エンジンの動力をチェーンと歯車により伝達する機械式クレーンから、油圧ポンプを駆動することで稼働し、機動性に優れた油圧式クレーンへ、いち早く切り替えを実施しました。
そうして油圧メーカーとの連携が強まった頃、油圧で稼働するケーンハーベスタの製造を開始したのです。取材に応じてくださった職員の方は「現在取り扱っているケーンハーベスタも、全て油圧で稼働しています。油圧に関する技術力は、魚谷鉄工の強みだと考えています」と話します。
魚谷鉄工では、日本の畑の広さに合わせた中型〜小型のケーンハーベスタを取り扱っています。
「もともと宮古島は、他のエリアに比べて機械化が遅れていて、長らくサトウキビの手刈りが行われていました。宮古島にも機械を導入し、今では私達のケーンハーベスタがエリアの高いシェアを獲得しています」。
現在は、全国的に農業の機械化が進んでいます。新規の販売で大幅な利益を獲得できる時期を過ぎた今、国内市場の保守やメンテナンスでお客様に貢献するため、日々機械に関する試行やお客様対応に励んでいます。
「私達は、回路設計や部品の選択を自社で行っています。メーカーが機械のすみずみまで把握し、深い知識を持っているため、お客様に柔軟な対応ができるのだと考えています」。
手刈りから機械に移行する時代の流れの中で、魚谷鉄工はお客様に丁寧に向き合ってきました。ケーンハーベスタの新規購入の際には、必要に応じて1週間程度、農家のオペレーターへの乗車指導を行います。
ケーンハーベスタに乗ったことのない、サトウキビ作自体が未経験の方でも安心して作業できるように。機械への深い知識と技術力で、農家の皆様を支えてきました。
現在は製糖業全体が、人材不足と砂糖消費量減という課題を抱えています。
「作業できる人材とコストが限られている中、簡単に育てられる品種が徐々に増えています。それと同時に、ケーンハーベスタも品種に合わせたマイナーチェンジが必要です」。サトウキビは品種によって繊維含有率や太さの違いがあり、硬さ、つまりは折れやすさも異なります。また、落ちた葉がケーンハーベスタに詰まってしまうこともあります。折れや詰まりによって作業効率が低下しないよう、現場の状況とお客様の声を常にキャッチし、新規のケーンハーベスタを改良。
既に納車したケーンハーベスタでも、改造の依頼があれば手を加えるケースもあります。石垣島や宮古島、沖縄本島南など収量の多い地域でも収穫時期内に作業が完了できるよう、品種変更に応じたケーンハーベスタを提供しているのです。
ケーンハーベスタの機械寿命は非常に長いものの、魚谷鉄工ではきちんと活用していただくための適切なメンテナンスや、状況に合わせた入れ替えのご提案を進めています。「ケーンハーベスタの状況を日々把握し、継続して使っていただけるようなお客様が増えていただけたら、魚谷鉄工一同、とても嬉しく思います」。
魚谷鉄工は2019年8月~2022年8月 に、JICAによる中小企業・SDGsビジネス支援事業に参画。インド西部マハラシュトラ州にて、サトウキビ生産性向上及び高付加価値化を目的とした、ケーンハーベスタ導入に関する普及・実証事業を推進しました。今後も、国内での事業推進に注力しながら、海外での展開を常に視野に入れて活動していく考えです。
魚谷鉄工がケーンハーベスタを取り扱い始めた当時、ほとんどの農家が手刈りでサトウキビを収穫していました。その際に、収穫部分だけを残し、不要な梢頭部や葉を燃やして収穫する「バーン(Burn Harvesting)」という方法が多くの農家で用いられていました。
このような畑を焼く方法は、想定以上に延焼してしまう可能性がある上、品質の劣化を防ぐため、一度火をつけたら必ず一帯を刈らなければなりません。
「気候変動の激しい沖縄で、風を読みながら、どのタイミングでどの方角から火をつけるか。非常にコントロールが大変で、労働負担も大きかったと聞いています」。もちろん、畑を燃やす以上、大気汚染の影響も考えられます。ケーンハーベスタの導入は業務の効率化だけでなく、環境保持にも繋がっているのです。
最後に、持続可能な航空燃料(SAF)についての意見をお聞きしました。SAFはサトウキビ、廃食油、微細藻類、木くず、古紙などを主な原料として製造されます。SAFにおけるサトウキビの活用は非常に有効だとした上で、このような回答をいただくことができました。
「ブラジルでは、栽培するサトウキビを、砂糖と燃料用のエタノールそれぞれの需要を見ながらマーケットに仕向けていく体制があります。 日本でも初手から燃料用に作ることができれば効率的なのは間違いないとは思いますが、個人的には、別の原料から製造の可能性を探るのも良いと思います。とはいえ、サトウキビ市場がSAFに着目した場合、機械を通して農家のニーズに対応していきたいと考えています」。
今後市場が変化した場合にも、魚谷鉄工が試行し、磨いてきた技術の蓄積がたくさんの農家の皆様を支えていくのだと感じられる取材となりました。
次の世代のために一歩前へ進みましょう。
皆様からのご連絡をお待ちしています