本レポートでは、沖縄製糖株式会社さまにインタビューを行い、沖縄・宮古島におけるサトウキビ生産の様子や、製糖業の具体的な事業内容についてお話をうかがいました。また、栽培や収穫の現状に加え、製糖産業が持つ課題、そしてエネルギー資源としての新たな可能性についても意見をお聞きしました。
企業名 | 沖縄製糖株式会社 |
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所在地 | 沖縄県那覇市泉崎 |
創業年 | 1952年 |
従業員数 | 58名 (2024年11月、インタビュー時) |
同社は「経済性、正確性、有効性・合規性」の4つの柱を経営理念として掲げ、沖縄県宮古島市で生産されるサトウキビの集積・製糖・輸送などを一元的に担う、粗糖製造業です。以下の2つの取り組みを中心に、地域の製糖産業を牽引しています。
サトウキビを実際に栽培するのは、同社の搬入区域に所在するサトウキビ農家です。その土壌・気候に適した高糖度の優良品種育成に向け、試験・調査・種苗栽培を実施しています。また、新たな優良品種を迅速に普及・拡大するため、農業研究センターと連携し、各地域に優良種苗の配布を行うことで、地域全域での増産に努めています。
地域では年々、生産者の高齢化が進んでおり、高齢化対策・担い手対策が喫緊の課題となっています。生産者の負担を減らすため、植付から収穫までの機械化一貫体系を推進すると共に、農業生産法人などの組織育成を図り、行政や関係機関との連携を強化して課題解決に努めています。
サトウキビは沖縄(宮古島)の亜熱帯気候や土壌に適し、他の作物に比べて台風や干ばつなどの気象災害に強い農作物です。また、これまでの品種改良により、病害虫に強く、糖度の高い品種が開発されたことで、農家にとっては安定した収入源になる農作物です。
中でも、宮古島におけるサトウキビの植付面積は、同島の農作物総植付面積の約50%を占め、重要な基幹作物となっています。また、サトウキビは沖縄の各島で植付けされているため、国土保全にも大きな役割を果たしています。
そういった気候面等の強みから、宮古島におけるサトウキビ栽培は約400年の歴史があり、親から子へ、子から孫へと引き継がれてきました。また、サトウキビが地元に生み出す経済効果は、生産高のみならず、その4~5倍に拡がります。栽培にかかる肥料・農薬代、収穫したサトウキビの積込運搬賃、造った砂糖を運ぶ船賃など、様々な分野に波及し、生産農家だけではなく関連事業に従事する人たちの生活をも支えます。サトウキビは、島の生活を維持するためには無くてはならない、宮古島の宝ともいえる農作物です。
沖縄製糖の日常の業務は、収穫されてきたサトウキビや生産した粗糖(※)、そしてそれを運ぶ運送機能などを管理することが主となります。宮古島には複数の製糖会社があり、区域ごとに担当が分かれています。工場の区域内で生産された原料を買い取り、製糖過程を経て、搬出するまでが同社の仕事です。
※サトウキビから生産される原料糖。原料糖は精製糖工場に販売され、砂糖(上白糖、グラニュー糖、三温糖等)へと精製されます。
製品を島外に搬出する際には船を利用します。工場には粗糖貯蔵用倉庫があり、最大で約2000トンが入ります。これを超えないように1500トンずつ船で出荷します。工場機能を止めないように原料の入荷と製品の出荷のバランスを調整するため、事前に取引先と調整をし、販売量を割り振り、その事前交渉に基づいて搬出します。この細やかな調整の仕事は、創業当初から変わりません。
生産者の高齢化や人手不足を補うため機械化を進めてきましたが、現在、農作業の機械化を進める中で、悩ましい面も出てきています。昔は、ほとんどが手苅収穫であったため、搬入日や搬入量が事前に決まっており、製糖会社としても業務の予測が立てやすい環境でした。しかし、現在は9割以上の原料がハーベスター(収穫用機器)で収穫されるため、その作業は天候に大きく左右されます。雨が降るとハーベスターが動かせず、浸水した畑を荒らさないためには、作業を一時中止する必要があります。行程の先行きが読みにくくなり、調整の難易度が上がっています。
その一方で、収穫フローの工夫により、全体の作業効率は年々向上しています。10〜15年前までは、夏に植えた株を1年半かけて育てて収穫した後、植え替えを行っていました(夏植え)が、現在は収穫後、植え替えをせずに残った株から再度萌芽させて生育させる方式(株出し)へと移行しました。
同社においては、以下の課題を特に意識して、産業や地域全体を盛り上げるべく尽力しています。
観光業が盛んになっている影響で、県内・島内では若い働き手を奪い合うような状況があり、特に工場勤務者の採用状況に改善が必要です。深刻な人手不足の解消のため、働き方の積極的な改革が急務となります。
宮古島は、沖縄全体の中でも安定したサトウキビの生産地となっています。ただし、生産量は徐々に減少しており、特に観光産業の発展による農地の減少が課題です。それに対し、機械化の推進や、若い農家の方が意欲的に取り組んでいるケースが見られるなど、農家保全努力によって一定の生産量が保たれているのが現状です。
畑1枚あたりの面積は平均4〜5反(約40~50a)ほど。親から受け継いだ畑を守っている農家が多い一方で、農業自体を辞める人も増え、利用されない畑が放置されるといった問題もあります。こうした畑については、中間管理機構を通じて新たな利用者に貸し出す仕組みによって、耕作の再開を推進しています。
農地の草刈りなどの手入れは、手が回らない農家もあります。宮古島にはまだない、草刈りの専門サービスの導入など、農業支援サービスの拡充が望まれます。将来的には、ドローンを活用した農薬散布なども検討される可能性があります。
現在の最大の課題である働き手の減少を解消するべく、同社は働き方改革に取り組んでいます。特に若年層の採用に向けては、基本給の引き上げなどの待遇改善のほか、2024年より勤務の3交代制が導入されました。
これまでの2交代制での運営では、1人あたり12時間勤務が基本でしたが、就業時間が長すぎるとの指摘があり、これを改善。ただし、2交代制は残業代も含めて収入が高くなる傾向があるため、それを頼りにして生活計画を立てていた従業員からは、3交代制になることで手取りが減ることを心配する声が出ています。しかし、すでに3交代制を導入している他社では、体力的にはかなり楽になったという声も多く、現場スタッフの懸念へのケアを行いながら、3交代制による負担減を進める方針です。
また、2024年度からは外国人労働者の採用も始まりました。外国人労働者は主にベトナムの方々です。ベトナムもサトウキビ栽培が盛んなので、相互に技術交流ができる可能性に期待が寄せられます。言語の壁が働きづらさに繋がらないよう、マニュアルや掲示物は多言語対応に更新されました。
そうした改革を進める一方で、「古き良き思い」をつなぐことにも、同社の企業努力があります。高いコスト意識が根付いており、たとえば、古くなった機材や道具でも、「まだ使えるのではないか」とベテラン社員が工夫して再利用するようなシーンが日常的にあります。スクラップ置き場に置かれたものですら、再活用することがあります。ものを大切にするこうした意識は、現場全体の文化として根付き、ひいては資源への高い意識の醸成にも繋がっているはずです。
本項では、沖縄製糖が考える自社のSDGsの目標にかかわる取り組みを、大きく「環境面」「人的資源面」にわけて取り上げます。特に、SDGs8「働きがいも経済成長も」という点において、8-2「多様化、技術の向上、イノベーションを通じて、経済の生産性をあげる」に大きく貢献しておられます。
根幹にあるのは、「製糖工場そのものが、SDGsに対応した資源循環型モデルの工場である」という考え方です。
この2点において、製糖業そのものが地域循環の一部として機能していると考えます。以下に、具体的な資源活用の詳細を記載します。
サトウキビの持つ繊維分を燃料として発電を行なうことで、製糖操業期の電気の大部分を自家発電で賄います。
また、水資源においても、糖汁→蒸発水蒸気→凝縮水→ボイラー水→蒸気→排蒸気と循環することにより、水の使用量を抑制することが可能です。製糖工場は「原料のサトウキビで動いている」とも言えるのです。
製造工程にて発生する副産物は全て回収され、土壌改良剤として畑に還元されます。
これらの副産物と家畜糞等を適切に処理すると、付加価値の高い有機肥料となります。また、同社は副産物であるバガスを利用した土壌改良剤の開発に取り組んでいます。これにより、窒素分を還元し土壌の改良を図っています。
サトウキビは、C4型光合成を行なうC4植物と呼ばれています。二酸化炭素の吸収能力が米や麦よりも高く、地球温暖化防止に貢献する植物のひとつです。高温・乾燥・強光下にも強く、水の利用効率も高いため、地球環境に優しい農作物といえます。
SDGs17の目標にある「人や国の不平等をなくそう」や「働きがいのある経済成長」などのいくつかの目標は、同社の働き方改革の延長にあると考えます。前掲の若年層・外国人労働者層への取り組みをはじめ、効率化と雇用の安定を両立させることで、地域社会の発展への貢献を目指します。
また、昨今は減少傾向にあった小中学生の工場見学なども、形を模索しながら復活が望まれます。文化の伝承や社会経験としての役割だけではなく、たとえば潮風の厳しい環境の中でも長年稼働する工場から伝わる、当時の設計や建設に関わった方々の技術力の高さや思いといった価値を伝えられる場を設けることも、重要だと考えます。
宮古島としても人口が増えてきているという明るい知らせがある中、同社や製糖業が島の窓口となることで少しずつ人員を確保し、地域を巻き込んで良い方向に進むことが望まれます。
エネルギー産業での活用も注目されているサトウキビについて、同社においては、糖蜜の販売実績があり、取引先にて飼料や化学原料に変える用途で活用されています。
一方で、過去に行政主導で進められたバイオエタノールプロジェクトが途中で終了したケースについては「こうしたことが繰り返されると、なかなか新たな挑戦に踏み切れない」と現場としての苦悩も明かしてくれました。多くの人がサトウキビ・製糖の現状と可能性に関心を持つことが、中長期的に持続可能な取り組みを実現する鍵になり、新しい時代を作っていく小さくも確かな一歩になるのではないでしょうか。
次の世代のために一歩前へ進みましょう。
皆様からのご連絡をお待ちしています