今回は、日本甜菜製糖株式会社様にインタビューを行い、てん菜糖事業をはじめとする具体的な事業内容についてお話を伺いました。同社は創業から“開拓者精神”を胸に事業を広げ、現在は飼料や農業資材、不動産等を取り扱う他、さまざまな分野での研究開発にも着手されています。
てん菜糖事業に留まらない“てん菜産業”のパイオニアとしての想いや、持続可能な航空燃料(SAF)についての意見もお聞きしました。
企業名 | 日本甜菜製糖株式会社 |
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所在地 | 東京都港区三田 |
創業年 | 1919年 |
従業員数 | 633名 |
大正8年の創業より、北海道の寒冷地農業の振興と国内甘味資源の確保に努めてきた日本甜菜製糖株式会社(以下、ニッテン)。砂糖の原料となるてん菜(ビート)は現在、生産量の100%近くが北海道で栽培されています。
その中でニッテンは、国内のてん菜糖供給の4割以上を担う、国産糖のトップメーカー。砂糖の安定供給に欠かせないリーディングカンパニーと言えます。さらに、製糖だけでなく地域の方の暮らしに貢献するさまざまな事業にも携わっています。
①てん菜産業での循環経済を構築
ニッテンは機能性食品や配合飼料の製造販売、育苗用の資材である「ペーパーポット®」等、農業資材の取り扱いを実施。さらには帯広市の旧製糖所跡地の一部を再開発して道東最大規模、約17万㎡の複合商業施設を建設。その他遊休地を医療機関や保育施設に利用するなど、製糖業に留まらない事業を展開しています。
「てん菜は砂糖の原料だけでなく肥料や飼料などに活用でき、捨てるところがありません。栽培支援にはじまり、あらゆる形に製造・加工し、お客様にお届けしています。そうして関連事業も含めて循環経済を構築している点が、私達の強みです」と大野次長、田中副課長は語ります。
②100年以上積み重ねてきた開拓の歴史
ニッテンには「開拓者精神を貫き 社会に貢献しよう」という社是のもと、困難を乗り越え挑戦を重ねてきた歴史があります。大正8年、国内での砂糖自給体制の確立と北海道の開拓推進を図るため、前身である北海道製糖株式会社が創立されました。
創業当時から、ニッテンは数々の困難に直面します。インフラも整備されていない時代に、てん菜を集めるところからのスタート。初年度から極度の多雨に見舞われてしまいます。
その後冷害を乗り越えて順調に耕作面積を広げるものの、日中戦争で1ヘクタールあたりの収量は大正時代の水準にまで落ち込み、やがて第二次世界大戦が勃発。終戦後の昭和22年に日本甜菜製糖株式会社へ商号を変更し、気象災害を受けながらも、なんとか厳しい経営状況を乗り越えてきました。
そうした中で実直に事業と向き合い続けたからこそ、令和元年には、創立100周年を迎えることができたのです。大野次長は、ニッテンの長い歴史に「何もないところから事業を形にしていった先輩方の胸には、並々ならぬ想いがあったと思う」と話します。
「その想いを受け継ぎ、私達も現在の事業展開に留まることなく、さまざまな分野のノウハウを重ね合わせてより付加価値の高い製品開発を進めています。
製糖業の割合を減らすのではなく、製糖業を中心としてその他を広げていき、開拓者であり続けたいと考えています」
「現在、ニッテンにとっての一番の脅威は砂糖消費量の減少」と、田中副課長。「人口減少の影響もあるでしょうし、一般的に甘いものは太る、健康に悪いから避けたいという価値観が広まっている。そこから、お客様の砂糖離れが起こっているのが現状です」
しかしニッテンはピンチをチャンスと捉え、製糖業にしっかりと向き合いながら別の分野にも力を入れています。オリゴ糖をはじめとする新規食品素材や、てん菜から砂糖を製造する際に発生する副産物を利用した新製品。他にも製糖副産物の糖蜜を栄養にパン酵母を製造して販売したり、酵母以外の微生物を利用した新規素材や製品開発にも着手しています。
「これまで砂糖は、基礎調味料としての安定した需要があった。しかしこれからは、マーケティングの視点で宣伝・販売していく必要がある」と、大野次長は語ります。
「それらをニッテンの確かな開発・生産技術と掛け合わせ、可能性を広げていきたいと考えています」
ニッテンの新規市場開拓および海外輸出は、2028年4月までの中期経営計画にも組み込まれている方針のひとつです。飼料やオリゴ糖などの健康食材の輸出強化を目指す他、商標登録されている製品「ペーパーポット®」や「チェーンポット®」も、大きな可能性を秘めています。
もともとてん菜を育てるために作られたのが、ペーパーポット®。北海道のような寒い地域でも、紙製のポットの中に根を収めることで酸素や水分が均一に供給されます。それにより、雪解けを待たなくとも早い段階で発芽等が始まり、てん菜を大きく育てることができるのです。
さらにペーパーポット®を数珠状に連結したチェーンポット®と、それらを簡易的に移植する機材「ひっぱりくん®」で、植え付け作業の簡略化を実現。労力を最小限に抑えながら、溝切り(植え穴堀)・植え付け・土寄せ・鎮圧という一連の作業を完了させることができます。てん菜以外の他の野菜にも有効なこれらの技術を海外で活用することで、各国の食文化の発展に大きく貢献できる可能性があるのです。
「『ニッテンの技術力を社外でも活用して、社会貢献するにはどうすればいいのか』。試行錯誤しながら進めている段階です。
海外市場はまだまだ開拓の余地があるため、積極的に展開していく考えです」と、お二人は力強く語りました。
SDGsの目標にかかわる取り組みについて、2つの視点からお伺いしました。
SDGsの目標【2.飢餓をゼロに】において、2−4「2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。」ことを達成するために尽力。
さらに【12.つくる責任、つかう責任】では、12-1「開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、すべての国々が対策を講じる。」、12-8「2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする」ことに大きく貢献しています。
ニッテンは、北海道酪農業に深く貢献してきました。糖分抽出後のてん菜を脱水、乾燥させた「ビートパルプ」は、乳牛の飼料として使われています。
日本の飼料原料がその大部分を輸入に頼っている中で、ビートパルプは安定して供給できる国産の飼料として、酪農の現場を支えています。
さらにはビートパルプに他の原料を配合し、より栄養価を高めた配合飼料を販売。カルシウムの吸収を助けたり、子牛の免疫力を高めたりと、乳牛の健康維持をサポートしています。さらに先述のチェーンポット®など省力化のための農業資機材の普及も実施し、持続可能な農業の地盤を固めてきました。
ニッテンは2012年に芽室製糖所、2019年に美幌製糖所・士別製糖所・清水バイオ工場で、食品安全マネジメントシステムに関する国際規格FSSC22000を認証取得しました。そのような厳格な環境下で、砂糖や機能性食品素材が取り扱われています。
素材はてん菜に含まれる有用成分、オリゴ糖、アミノ酸、食物繊維など多岐に渡ります。オリゴ糖は胃や小腸で消化吸収されにくく大腸まで達し、健康維持に役立ちます。
アミノ酸は食品のうま味増強や肌の保水に役立ち、食物繊維は便秘の予防をはじめとする整腸効果があると言われています。お客様にお届けするまでの全ての工程で適切な管理を徹底し、安全、安心な製品を安定して提供していく。これが、ニッテンの企業力です。
砂糖を通じた食育も、ニッテンの取り組みのひとつです。1989年、旧帯広製糖所の跡地の一角にビート資料館を設立しました。てん菜糖業とニッテンの歴史に関する資料等を多数保存し、砂糖に関する正しい知識の普及に貢献しています。
さらに製糖所での工場見学の実施や、北海道帯広市や士別市で定期開催している地域交流イベントにも参加。多くの方に、より健やかな食生活を送っていただくための活動を広げています。
ニッテンは、持続可能な航空燃料(SAF)の研究に積極的に取り組んでいます。
2022年7月から2024年3月まで、東京大学・大学院と共同で、SAFや食品機能性素材の原料として期待される微細藻類を糖質資源から生産するための技術開発に参画。一定の成果をあげることができました。
現在は神戸大学と共同で、糖蜜を栄養源とする「油脂酵母」によってSAFを生産する研究に取り組んでいます。「てん菜は、持続可能な社会には欠かせない作物。これからも活用・開発を進め、北海道、そして日本の未来に貢献したい」と、お二方は笑顔を見せました。
次の世代のために一歩前へ進みましょう。
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