新光糖業株式会社さまを訪問し、鹿児島県種子島におけるサトウキビ生産と製糖業の現状、環境配慮型の取り組み、そしてエネルギー分野での新たな可能性についてお話を伺いました。
同社は「ゼロエミッション工場」として、製糖工程で発生する副産物の有効活用に注力し、持続可能な社会の実現を目指しています。
本レポートでは、新光糖業の取り組み、課題、そして今後の展望をまとめています。
企業名 | 新光糖業株式会社 |
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所在地 | 鹿児島県熊毛郡中種子町野間11033 |
設立年 | 1964年(前身の朝日開発株式会社は1956年に設立) |
従業員数 | 94名(令和6/7年期、正社員・嘱託60名、季節従業員34名) |
同社は、国内甘味資源の自給率向上と地域農家の要請に応じて設立され、地元農業と経済を支える重要な役割を担ってきました。
「公正で透明性の高い経営」を通じて、従業員の豊かさ、顧客の満足、株主の利益を追求しています。また、人間尊重を基本とし、高品質で安全な製品を提供することを目指し、地域社会への貢献を経営の柱に据えています。
同社は、製糖工程で生成される副産物を有効活用する「ゼロエミッション工場」を目指しています。特に、副産物のバガス(サトウキビの搾りかす)をボイラー燃料として使用、発電することで工場内の電力熱需要を賄うコージェネレーションシステムを運用しています。
この取り組みは、日本品質保証機構(JQA)から「グリーン電力発電設備」として認定されています。
他にも各工程で生成される副産物は工場内外で有効活用したり、排出される物質に適切な処理を施したりすることで、地球環境への配慮に最善を尽くしています。
工程 | 圧搾工程 | 清浄工程 | 分離工程 | ボイラー | 各工程 |
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副産物 | バガス(サトウキビの搾りかす) | 沈殿物 | 最終糖蜜 | 燃料灰 | 糖分を含んだ排水 |
再利用 | ボイラーの燃料 家畜の敷料 |
堆肥の原料 | 家畜の飼料 発酵原材料 |
特殊肥料 | 機器用冷却水 |
種子島で栽培されている「はるのおうぎ」は、従来品種の農林18号などに比べて茎数が多いため、単収が多く台風などの災害にも強い特徴があります。また、従来品種は、収穫時に使用されるハーベスタがサトウキビの株を引き抜いてしまうことがありましたが、「はるのおうぎ」は根の張りが強く、安定した生産が見込めます。
地域農家の高齢化による減少が進む中で、農家の負担が少なく、高単収が見込める「はるのおうぎ」を同社も推進することで、地域の安定した栽培面積の維持に貢献しています。
SDGsやカーボンニュートラルなど社会的な関心が高まる中、同社は国などの事業や研究機関、大学に積極的に協力し試験研究も進めてきました。その成果や取り組みを株主や地元の学生などに向けて発信するため、工場見学も数多く実施しています。
同社の平成元年からの実績データによると、サトウキビの10a当たりの収量(単収)は、平成10年に8,738㎏ありましたが、その後 平成27年に4,986㎏にまで減少し、現在はやや回復基調にあります。サトウキビの生産量は気象条件により左右されるため、台風被害が続いたことが要因の一つです。
他にも、平成5年頃から本格導入されたハーベスタによる収穫比率が9割を超えてきており、従来品種の株が引き抜かれることにより、株出しがしにくくなったことも単収減少の要因の一つです。
令和3年春植から配布が開始された「はるのおうぎ」は根の張りが強く、株出し萌芽性も優れており生産量は少しずつ回復しています。
サトウキビの栽培農家の数(蔗作戸数)は、平成元/2年期は4,715戸であったが、令和5/6年期では1,229戸、令和6/7年期は1,178戸であり令和6年/平成元年比で25%にまで減少しています。地域別の蔗作戸数では、種子島の南側に位置する南種子町の減少率が最も高く18.7%となっています。
種子島は、サトウキビ以外にも安納芋やじゃがいも、米などが生産されています。安納芋は、サトウキビと比べて1キロ当たり10倍以上で取り引きされるため、サトウキビから安納芋に切り替えた農家が増えたことも要因の一つです。ただし、基腐病(もとぐされびょう)の発生や高単収が見込める「はるのおうぎ」の登場により、再びサトウキビを栽培する農家もいます。
同社においては、以下の課題を特に意識して、製糖業や地元農家、地域全体を盛り上げるべく尽力しています。
同社工場のサトウキビを圧搾処理する公称能力は、1日当たり1,600tであり鹿児島県内最大を有しています。ただし、現在は1日当たり1,200t程度の圧搾量となっています。
理由の一つとしては、工場の労働力不足です。特に、季節従業員の確保が難しく、直近2年間で17名の減少となっています。近隣の馬毛島で大規模な工事が行われており、島内全体が人材不足となっています。同社は、工場の集中制御など設備投資を行っており生産効率を高めてきました。ただし、今後も人材不足は課題となるため、更なる省人化のための設備投資が課題となります。
先に述べたように、サトウキビの栽培農家は年々減少しており、生産量を確保することが課題となっています。
高い単収が安定して見込める「はるのおうぎ」の登場により、生産量は下げ止まりましたが、「はるのおうぎ」の特性を活かしつつ糖度の高い品種改良が期待されています。
また、農家数の減少対策としては、ハーベスタを含む農業機械の大型化と1圃場面積の拡大による生産効率アップが不可欠です。
工場の糖回収率向上にはトラッシュ(夾雑物)除去が必要であり、そのような機械設備などの開発に期待しています。
令和3/4年期には最終糖蜜の取引先の船が遅延し、最終糖蜜を保管するタンクがいっぱいになってしまったため、2回の工場停止を余儀無くされました。他にもバガスなどの副産物を工場内や地元農家で再利用していますが、副産物が製品としてより多く再利用されることが求められます。
SDGsやカーボンニュートラルに対する注目が高まっており、行政や研究機関の力を借りて副産物が製品となる取り組みが期待されます。
同社は、製糖工程において「ゼロエミッション」を実践することで、持続可能な社会の実現に貢献しています。各工程で生成される副産物を堆肥や特殊肥料として再利用するほか、バガスをボイラー燃料として活用し、工場の全エネルギー需要を賄っています。
また、地域環境への配慮として、副産物の有効活用を推し進め、自然環境への負荷を最小限に抑えています。具体的なSDGsの目標とターゲット、適用例は以下の通りです。
製糖工場においては副産物の有効利用がコスト削減に繋がり、バガス燃料の効果は大きい(A重油換算5~6億円/1シーズン)。
しかし、近年は繊維分の高い「はるのおうぎ」の普及により発生するバガス量が過剰となってきており、同社は「バガスなどの副産物が資源になるのであれば貢献したい」と考え、新しい取り組みに積極的に協力参加しています。
現在、東京大学の小原氏に協力してもらい副産物からアルコールを試作製造する蒸留設備を導入しました。また、バガスや木質チップを半炭化させた微細な灰を油と混ぜてディーゼルエンジン用燃料を作る取り組みも検討しています。その先には、より高単価が見込める製品としてSAFもあると認識されています。
また、同社は「将来は砂糖だけでは難しい」と危機感を感じ、このような副産物から新たな製品を生み出す取り組みは、自社だけではなくサトウキビに携わる関係者や地域全体の持続可能な社会を実現するために必要になると考えています。
国土保全には産業と住民が必要です。
その意味において南西・沖縄の島嶼部に展開するさとうきび産業は国土保全に役立っているため、農水省による砂糖行政のみならず、防衛省や環境省による支援も考えられるのではないでしょうか。
次の世代のために一歩前へ進みましょう。
皆様からのご連絡をお待ちしています