鹿児島県におけるサトウキビ産業は、地域経済を支える基幹的な役割を担っています。
本レポートでは、JA鹿児島県経済連さまが展開する事業を中心に、生産現場の現状、環境への貢献、そして課題と展望についてのインタビューを行いました。
高齢化や労働力不足といった課題に直面しながらも、何より産業の現場で生きる人々に向き合う姿勢、そして、持続可能な社会の実現に向けたサトウキビの役割や、副産物の活用、さらには新燃料などの可能性にも触れ、その未来を探る内容となっています。
企業名 | JA鹿児島県経済連 |
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所在地 | 鹿児島県鹿児島市鴨池新町15番地 |
主な事業 | 畜産事業、園芸農産事業、生活事業。また、食品総合研究所を有し、鹿児島県下の加工食品や農畜産業を広く支え、生活者の暮らしを守る。 |
現在、JA鹿児島県経済連(以下、経済連)は、種子島・奄美を管轄に、サトウキビの関連事業に携わっています。生産振興や取り扱い業務に加え、中央要請や交付金の支援を行っています。現場での生産指導は農協や島ごとの担当者が対応しています。
管轄区域において、生産者は減少していますが、作付面積は維持されています。しかし、一農家あたりの管理面積が広がっていることで、大型機械の導入などで収穫作業は効率化しているものの、作業負担は増えている現状があります。
地元の経済にとってサトウキビは非常に重要で、トラック運送業者や製糖工場、そこで働く人々の生活を支えています。
また、サトウキビは「国防作物(国土保全や地域経済維持に寄与する作物)」としての役割も担っていると考え、経済連としてもその生産基盤の維持に注力しています。
サトウキビの作型には「春植え」「株出し」「夏植え」の3種類があり、特に収穫後の根を翌年まで残して生産を行う「株出し」は再生が可能で効率的です。
一方で、収量が伸び悩むという課題もあるため、これらの作型をバランスよく取り入れて生産されています。
2024年は成長も順調で、発育も良かった一方、干ばつが続いて雨が少ない傾向もありました。台風については、勢力は強くなっていますが、進路が以前と変わり、石垣島を通るようなコースではなくなっています。
サトウキビは二酸化炭素の吸収にも寄与しています。
株出しで残した根は炭素を多く蓄積するため、環境面にも大きなメリットがあり、サトウキビ自体が環境に貢献する作物であるという評価が可能な作物なのです。脱炭素やSDGsの観点からも、サトウキビは非常に魅力的な作物だと考えます。
生産が自然環境にプラスの影響を与えている点を評価し、交付金の加点制度などで支援が拡大されることが望まれます。
高齢化と労働力不足により、細やかな管理が難しくなっています。なお、人材の課題は島ごとに状況が異なり、さらには各土地の地形的な制約も発生します。喜界島ではダムの整備により農業振興が進み、移住者や地元に戻る人も増えています。
また、サトウキビの収量としても生産性が高く、現在も生産目標を達成しています。これにより地元の活気も維持されていると感じます。
カーボンクレジットとは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット化」する仕組みです。
鹿児島県経済連では、株式会社Linkholaおよび株式会社AmaterZ、国立大学法人九州大学と協働し、豊かで環境に優しい持続可能な畜産を営むことができる未来畜産の実現に向け、「未来畜産GHG排出量削減―Kモデル」の構築・普及に向けた取り組みを2024年7月より開始しました。
本プロジェクトは、豊かで環境に優しい持続可能な畜産に向けて、脱炭素、ESG、SDGs、アニマルウェルフェア、そして働く人々に関する社会問題等に取り組むことで、鹿児島や日本の牛・豚・鶏の素晴らしさと食文化を国内や世界の人々に広く知っていただくことを目指しています。
同モデルでは、世界初となる牛・豚・鶏、3つの畜産のボランタリークレジット化※の取り組みを開始しました。
※国が主管するJクレジット制度に対して、民間主導によるカーボンクレジット制度。欧米を中心に国際取引できるクレジットとして市場規模が拡大しています。
収穫したサトウキビのうち、上部の糖分が少ない部分や葉はカットされ、畜産に活用されています。バガスは一部が飼料として使用され、農家の方がトラックで運んでいます。
ここまで挙げた多様な取り組みを通し、鹿児島県経済連はSDGsの目指す目標を包括的に達成するべく、尽力しています。特に成果が強く紐づく点はSDGsゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、ゴール15の「陸の豊かさも守ろう」の2点です。
産業と技術革新については、農業用ドローンによる農薬散布の実証試験など開発を進め、産業の担い手不足を補うだけではなく、既存の農業従事者にとっても身体に負担の少ない環境の提供を目指します。JAが主導することで、個々の農家だけでは踏み出しにくい産業改革についても、産地で作業を受託をすることで積極的に技術革新に関わっています。
ゴール15については、地域資源を活かした低コスト肥料の開発と供給が目を引きます。
2024年の3月には、地域資源ペレットセンターが設置されました。ここでは、地域に豊富にある畜産堆肥を活用し、化学肥料30%削減の目標に向け、肥料の原料等に使用する堆肥ペレットを製造します。また、かんしょ栽培に不可欠なマルチフィルムを生分解性にすることで、土壌中の微生物により分解されることから、収穫時のマルチフィルム剥ぎ取り作業の大幅な削減に成功。
農業現場への貢献だけではなく、廃プラスチックの処理費用を低減することにも繋がるため、かんしょだけではなく、さといもやサトウキビなどその他の作物への応用できる大きな可能性が生まれました。
ここで取り上げた取り組みやゴールは一部ですが、JAグループのすべての事業と活動は、基本的にSDGsの目標達成に基本的に関与しているとの考えのもと、鹿児島県経済連においても、SDGsの理解促進、そして事業施策の取り組みを通して、永続的な貢献を目指します。
サトウキビは、未来を切り開く可能性を秘めた作物です。島に住む人々が安定的に生活し、次世代を育むための基盤となる作物です。
海外ではサトウキビが基幹産業になっている例もありますが、日本はまだその段階には達していません。たとえばタイでは、サトウキビを中心にバガスで発電し、エタノールで燃料を供給するなど、総合的な農産業が財閥の中心になっています。一方、日本では政策が砂糖生産に集中しており、サトウキビのポテンシャルが完全には活かされていません。
この状況を打開するための議論が必要だと考えています。
もちろん、砂糖生産を中心とした現在の政策が正しかった面もあります。
しかし、産業全体の厳しい状況を踏まえ、次の一歩を考えるべき時期です。SAFやエタノールなど新たな活用法を模索し、産業全体の競争力を高めることが求められています。
改革を進めるに当たり、単独ではなく、団体での取り組みが重要という意見が多く観られます。業界全体で方針を決め、調整しながら進める必要があります。個別の製糖会社が単独で行動するのは難しいという視点の裏返しでもあるでしょう。
SAFを用いたジェット燃料の話はまだ実現していない技術であり、現場ではまだ実態をつかみかねている人がほとんどです。
しかし、サトウキビ産業全体がSDGsや脱炭素など前向きな取り組みを進めていることを伝える意味では、SAFの話題も1つの興味深い要素であることは確かです。
繰り返しになりますが、サトウキビは国防や安全保障の観点からも重要な作物です。
さらに、脱炭素の視点からも注目する価値があります。こうした側面を伝えることで、産業全体の未来を描き、社会的な理解を深めていった先に、より大きな可能性が拓けると考えています。
次の世代のために一歩前へ進みましょう。
皆様からのご連絡をお待ちしています