本レポートでは、南西糖業株式会社 代表取締役社長 の 神崎 俊様にインタビューを行い、鹿児島・徳之島におけるサトウキビ生産の様子や、製糖業の具体的な事業内容についてお話をうかがいました。
また、栽培や収穫の現状に加え、製糖産業が持つ課題、そしてエネルギー資源としての新たな可能性についても意見をお聞きしました。
企業名 | 南西糖業株式会社 |
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所在地 | 鹿児島県大島郡徳之島町 |
創業年 | 1954年 |
従業員数 | 94名(2024年4月時点) |
鹿児島県の徳之島で生産されるサトウキビの集積・製糖・輸送などを一元的に担う、製糖事業社です。
東京都内に本社、徳之島には事業本部を置き、島内事業を統括しており、2つの工場(伊仙工場、徳和瀬工場)で甘しゃ糖(原料糖、グラニュー糖などの原料となる)を製造しています。
また、子会社である有限会社南西サービスでは、農作業の機械化受託によりサトウキビ栽培の省力化をサポートし、関係機関と協力してサトウキビバイオ苗の育苗技術を導入、メリクローン苗を大量生産、品種更新などを進め、農家の生産性向上に努めています。
鹿児島県の徳之島は亜熱帯気候に属し、年間を通じて温暖で日照時間が長いため、サトウキビの成長に最適な環境が整っています。火山由来の土壌はミネラルが豊富で、水はけが良い赤土が主体です。
この土壌はサトウキビの根の発育を助け、糖度の高いサトウキビに育ち、高品質の砂糖を生み出しています。徳之島は黒糖の生産地としても知られ、ミネラル豊富な黒糖は健康食品として人気があります。サトウキビは背丈が高い作物ですが、徳之島では台風が頻発するため、強風に耐えられるよう育成された品種が使われています。
サトウキビ栽培は徳之島の基幹産業となっており、多くの農家はもちろんのこと、サトウキビを運搬する輸送業者や2つの製糖工場で働く労働力など、島を支える産業となっています。
また、サトウキビ栽培は、土壌浸食を防ぎ、特に、徳之島のような急峻な地形では、サトウキビが環境保全の観点でも重要な役割を果たしています。
南西糖業株式会社は、徳之島に2つの製糖工場を有し、サトウキビを主原料に砂糖と糖蜜を生産しています。製糖の工程では、サトウキビを粉砕して糖分を抽出し、砂糖や副産物である糖蜜を製造しています。また、搾りかすはバイオマスエネルギーとして利用されるなど、循環型の製糖が特徴です。
日本の製糖業は国内需要に応える重要な産業でしたが、近年では生産量や農地面積の減少に伴い、業界全体が縮小傾向にあります。
同社の製糖プロセスも効率化が進む一方で、農家の高齢化や若年層の流出などで労働力不足が深刻化しており、業務運営に課題が生じています。
同社においては、以下の課題を特に意識して、産業や地域全体を盛り上げるべく尽力されています。
徳之島全体のサトウキビ生産量は年間約16万トンですが、過去数年で毎年約1万トンずつ減少しています。高齢化による農業従事者の減少が主な原因とされています。
また、作付面積も3300ヘクタールから3250ヘクタールに縮小しており、生産量が縮小傾向にあります。徳之島は高い出生率と長寿の島として知られる一方で、若年層の島外流出が進んでいます。特に、進学や就職を機に島外へ移住した若者の多くが帰島しないため、労働人口が減少しています。
若年層の島外流出と農業従事者の高齢化がさらに進み、後継者不足が深刻化しています。高齢化が進む農家では農作業に十分な手間をかけられず、生産効率(反収)が低下傾向にあります。生産の効率性を高める取り組みが急務となっています。
小規模な農地が分散し、土地の集約化が進まないことも課題の一つです。細切れの農地が多く、大型農機を効率的にまわす農業経営が難しく、生産効率を上げられない状況にあります。
労働力不足への対応として、徳之島では外国人労働者の活用を進めています。特に、東南アジアからの労働者を受け入れ、収穫作業などに配属しています。また、インターンシップ制度を活用し、鹿児島県内からの学生を受け入れることで、若い人材のITリテラシーを活用した業務効率化を図っています。
同時に、スマート農業やドローンを活用した新技術の導入を検討しており、これにより農業従事者の負担軽減や作業効率の向上を目指しています。これらの取り組みにより、若年層や外部からの人材確保を進める意向です。
SDGsの目標「17.パートナーシップで目標を達成しよう」にかかわる南西糖業の取り組みをご紹介します。
サトウキビの収穫後の後工程にも課題があり、収穫後の品質低下が速い、収穫作業予測が困難、それにより操業計画の最適化の妨げとなっています。
これらの課題解決に向け、南西糖業株式会社は、約3,000haのサトウキビ農地を管理する有限会社南西サービス、ならびに株式会社クボタと連携し、次世代のサトウキビ栽培モデルの確立を目指した実証実験を進めています。
営農支援システム「KSAS」は、農業機械とクラウドを連携させて、作業効率や収量向上をサポートするスマート農業システムです。サトウキビ収穫機の稼働情報をリアルタイムで「KSAS」に送信することで、機械の位置情報や稼働状況を把握します。
これにより、収穫作業の進捗状況を製糖工場が即座に確認できるようになり、搬入量の予測精度が向上し、操業計画の効率化が期待されます。
この実証実験を通じ、サトウキビを生産する農家、南西糖業やクボタがパートナーシップを組んで、サトウキビの収量・品質の安定化、製糖工場の操業効率の向上、労働負担の軽減と農作業の効率化、地域経済の活性化を目指しています。
エネルギー産業での活用も注目されているサトウキビについて、神崎氏は現在のところエタノールやSAFへの転換についての具体的な動きはないものの、砂糖の需要減少が避けられないことが見込まれるなか、徳之島の基幹産業であるサトウキビ栽培を守るためには選択肢として排除しないと語ってくれました。
次の世代のために一歩前へ進みましょう。
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