元気な農家をめざすなら「5S」を実践しよう

統括研究員 谷川大致
監修・執筆統括研究員 谷川大致
元気な農家をめざすなら「5S」を実践しよう

皆さんは「5S」という言葉を聞いたことがありますか。
現在は主に製造業・サービス業の現場で生産性を高めるため提唱されているもので、実践すべき5項目「整理/整頓/清掃/清潔/しつけ」のローマ字表記から「5S」と呼ばれています。

この「5S」は、農業経営にも有効です。

早速「5S」をやってみよう

農場・農場までの通路・農機置き場・選別場・事務室など、皆さんが使うあらゆる場所で効果があります。
片付いていないな、ゴチャっとしているなと思ったら、ぜひ次の順番で「5S」をやってみてください。

整理

全ての品物を出し、まず「要る/要らない」を選別します。「1年使っていないもの」はひとまず倉庫へしまい、活動場所からは除きます。
温かい地域での雪かきスコップのように「シーズンで1回か2回使うもの」も要らないと判断して、別の場所へ移します。

机の引き出しにあるペンなども、チェックの対象です。
使う人が何人いて、実際に使われているのは何本くらいか、考え直すと数本で済むことも多いです。どの道具も必要な分だけ手元にあるようにします。

整頓

整頓のゴールは、必要なときに必要なものがすぐ取れる状態です。
病院の手術でも医師が「メス」といえばすぐメスが手元に来ます。「どこだっけ」と探していては効率が悪いでしょう。それは農業も同じなのです。

整頓の方法はいくつかあります。
代表的なのは、置き場にラベルを貼り、どこに何があるか誰でも分かるようにすることです。スポンジなどで道具の型を抜いて置き場を作り、はめ込んで片付ける方式もあります。有無が一目で分かるので管理しやすくなります。

清掃

整理・整頓まで実践したら場所も道具も全てきれいにします。清掃する一番大きなメリットは、異状が見つかることです。
例えば農機についている油について、使ったから汚れたのか故障で漏れ出ているのか、清掃しなければ確かめられません。ハサミや工具も手入れをすれば小さな不具合が分かり、大ごとになる前に直せます。

1日1回仕事終わりに必ず清掃する場所、1カ月ごとに清掃する場所、年1回の大掃除だけで大丈夫な場所などを分けて、ルーティンワークにします。

清潔

上記3項目について、常にキープできるようにするのが目的です。
実践するためには「理想の清掃状態とは何か」をメンバー全員が共有します。

しつけ

これは「清潔」にも通じますが、皆が同じレベルでキープできるように意思統一を図るのも重要です。
なぜこのルールで動くのか、皆が納得する合理的な理由を定期的に確認し、不備があれば改善するようにします。

「5S」を実践すると、生産に直結する

ビジネスの生産管理には「Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)」の頭文字をとった「QCD」という用語があります。
「5S」を実践するとまず効果が出るのが「コスト」です。探し物の時間が減れば人が効率よく動けるので、人件費が減ります。大きな不具合を起こさずに済むので維持費も減ります。
余計な在庫を持たないので保管費も減るでしょう。

また、作業時間が短縮できれば「納期」を管理しやすくなり、清潔さを維持できれば「品質」も上がります。

「5S」を実践する真の目的

5S」の効果は、単に職場環境をきれいに整えるだけではありません。真の目的は「自律した社員を作ること」にあると考えています。

「5S」は必ず職場全体を巻き込んで進んでいく活動です。そこで働く人であれば場所や道具に無関係な人はいないので、皆で考えざるを得ません。
改善を重ね、より良い方法を自分たちで考え、実行する体験は、新人や事務・営業・技術職など全員の意識をつなげます。

スポーツの世界ではアイコンタクトでチームプレーが成立し、さらにチームワークが密になればお互いの動きを察知してファインプレーが飛び出します。
農業の現場も同じです。自分たちで決めた目標に向かえば仕事が楽しくなり、作物も農業も元気になります。元気の源のためにもぜひ「5S」を実践してみてください。

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

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