今後増加する農業アウトソーシング 農協やメーカーが支援できることとは

統括研究員 谷川大致
監修・執筆統括研究員 谷川大致
今後増加する農業アウトソーシング 農協やメーカーが支援できることとは

今後は農家の数が減り、2030年には現在の半分にまで減ると予想されています。そんな状況でも日本の農業をつなげていくためには、残された農家や農業法人の生産効率を上げるしかありません。

そこで大きな効果を期待されているのが「農業支援/農業アウトソーシング」サービスの拡大です。

また、それらの導入を助けるサポーターとして、農協や農機メーカーの存在も見逃せません。農業のシュリンクを防ぐためにも、これから農協や農機メーカーができるサポートや支援方法について考えます。

今ある「農業支援サービス」の種類とは

農業での外注先には「A.作業サポート型/B.判断サポート型」があり、大きく分けて以下の4つがあります。

  1. 種まき・防除・収穫などの専門作業受注型(A)
    年に数回ある繁忙期に不足する人手を補うため、作業単位で外注できるサービスがあります。
  2. 機械レンタル・シェアリングなどの機械設備供給型(A)
    作物栽培を新たに頼まれた、新しい作物に挑戦したいなど、テストケースでも必要な農機を調達することができます。
  3. 人手を単発で手配する人材供給型(A)
    人材派遣会社を経由すれば、社会保険などの事務手続きを任せながら必要な人数を手配することができます。
  4. 土壌分析など判断材料を提供するデータ分析型(B)
    圃場の複数ポイントからサンプルを取り、種まき前・栽培中・収穫後などの土壌状態をチェックできます。

農林水産省も「農業支援サービス」の重要性に気づいて、この分野の事業者育成に向けた予算を増やしています。「農業支援サービス」は、これから成長していくビジネスでもあるのです。

農水省では全73事業者・87サービス(令和5年8月25日時点)をまとめたExcelファイルを公開しています。

https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/attach/xls/service-13.xlsx

正直これはかなり見づらいので、皆さんが探す場合はGoogleなどの検索で【農業支援サービス(地域名)(必要なサービス名)】と打ち込むほうが早いでしょう。

今後は1農家あたりの圃場面積が必ず拡大する未来が待っています。どの農家でも単体運営が難しく、外注先を活用しなければ行き詰まってしまうでしょう。裏を返せば、農家と「農業支援サービス」をうまく結びつける事業があれば多くの農家が助かると考えます。

農協やメーカーも「農業支援サービス」の主体になれる

すでに農機リースや土壌分析など「農業支援サービス」を行っている農協・農機メーカーはあると思います。しかし知られていなければサービスの持ち腐れです。

まず周知を徹底し、その上で考えられるのが以下の方法です。

  1. 農機リースで扱う機械の幅を広げる
    トラクタやコンバインなどの汎用農機だけなく、ドローンや自動収穫ロボットなどの機材も取り入れてください。最も手間がかかる作業をサポートする機材として、今後爆発的に需要が増えます。
  2. 他社ユーザーにも声がけを広げる
    例えば土壌分析であれば、まだ未接触の農家や団体でも「調べてみませんか」と声をかけられます。得たデータからアドバイスをすれば信頼が得られ、データ取得の面でもメリットがあります。
  3. 今からスモールスタートを体験する
    需要が激増する一歩前である今こそ、さまざまなサービスと組んでみて小さなスタートを切っておきましょう。事業と地域の相性についてもまだ時間をかけて検討できます。

土壌分析では41%が「売上が上がった」、35%が「単位面積の収穫量が上がった」と回答したデータもあります。

農業を継続させるためには、多くの農家が長期的な収穫・収入を上げられるようにするのが一番です。1軒や1団体で耕作できる圃場や収穫量は限られますが、人手・機械・分析などを外注できればまだまだ生産量を向上できる余地があります。

事業提供者からすれば、農協や農機メーカーはビジネスで組みたい最適の相手です。困る農家さんを減らすためにも今から積極的に「農業支援サービス」という新機軸を作っていきましょう。

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

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