JAしまね西部営農センター

  • 地域島根県

1.今行われている「ヒートポンプ導入実証実験」について

実験内容は以下の通りです。

  • 一軒のぶどう農家さんを対象。
  • 同じ規模のハウスに1棟はヒートポンプを導入し、もう1棟は導入せずに栽培。
  • 生育調査(作型・収量)・エネルギーコストの増減調査。

結果がでるのは今年の5月の予定です。現段階では2~3日程度、生育速度に差が出てきました。
実証実験の背景には、「エネルギーコストの高騰」「化石燃料使用削減の社会的な機運」がありました。
全国的に果樹関係でのヒートポンプ導入の実例は少ないので今回「みどりの食料システム戦略推進交付金」を活用し実証実験を開始しました。
設備投資の金額を考えると省エネ・脱炭素に対して投資する前に農業経営の安定化が最優先事項であるため、品質・コスト両面の効果的なエビデンスが無いと普及活動は難しいとのことです。

2.ヒートポンプの導入が進まない要因について

考えられる要因は以下の3つとなります。

  • ヒートポンプの存在を知らない。
  • 山陰地方の寒さではヒートポンプの出力が足りない。
  • 急激な気温の低下に際して、ヒートポンプの立ち上がりが悪く、樹体に影響がでる。

山陰地方の寒さが大きなネックとなっています。
「ぶどう」栽培は平均13~15℃を保つ必要があり、10℃を下回ると生育に影響を与えます。その為、ハウスの多重被膜では賄えないためどうしても重油暖房の利用は避けられません。尚、今回の実証実験もヒートポンプ単体ではなく、重油暖房設備と組み合わせたハイブリッドタイプのものを導入しています。
又、ヒートポンプ導入に対しての懸念点の一つに「設備寿命が短いのではないか」ということが挙げられます。室外機が外にあり潮風があたるので、塩害の影響は大きいと考えております。

3.小規模農家が設備投資を回収するには

「ぶどう」に限って言えば、6次化は効果が無いと思います。
ぶどうはある程度の期間、収穫ができます。余計なものを増やすと1次が疎かになる懸念があります。1次の規模を挙げていくことが一番良いと思うとのことです。

4.その他の取り組みについて

SDGsに関するその他の取り組みについては以下の通りです。

  • 効率的な加温方法として「EOD加温」の有効性について県で調査していました。これについては生育面・コスト面両方で効果が実証されました。その為に普及活動を行っています。
  • 10年ほど前から「木材チッパー」をJAで購入し、近隣農家に貸出を行っています。農家さん自身で剪定枝を木材チップにして土に返しています。
  • 加温機ノズルの定期交換など細かな省エネ対策については講習を行っています。
  • 温度センサー付きハウス自動巻き上げ機を導入して省エネに努めている農家さんが増えてきました。
  • 養液土耕栽培を採用することで、肥料の使用量削減に努める農家さんも増えてきました。
  • 木質ペレットの活用に対する実証実験は中山間地域研究センターで行われていました。ここでも急激な温度低下や燃えカスの処理の問題から「有効性は認められない」という結果になっています。

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

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