現在、5.1haの「美里グリーンベース」では、1日3~4万株のレタス類を安定的に生産しています。
一方で、生産の担い手は平均20-30名程度です。これは、生産工程の9割が自動化されているが故に成せることです。
具体的には「舞台ムービングシステム」と名付けられた、育苗から栽培までを自動管理するシステムを導入しています。このシステムにより、ソイルブロック(当社オリジナルの培地。
当社は2003年に設立された農業生産法人です(代表取締役社長 針生信夫氏)。
「未来の美味しいを創る。」という経営理念のもと、お客さま目線を大切にした経営を行っています。
当社の起源は、初代針生家にて農業が開始された約300年前の1720年。社名の「舞台」は、針生家の屋号が由来です。
新嘗祭の奉納の舞台があったことから、「舞台」という屋号が付きました。針生社長が23歳の時に経営を引継いだ際は法人格ではありませんでしたが、現在では、グループ全体の売上高は38.8億円、従業員数は208名になるまで成長。
東北エリアのセブン-イレブン約1,450店に生食用カット野菜を供給しています。
美里グリーンベースの外観
今回の訪問地である当社の主力拠点「美里グリーンベース」は2021年に竣工。最新技術を取入れた約5.1haのハウス内でレタス類5種類を栽培しています。
TPPAは「(T)徹底的に(P)ぱくって(P)ぱくり倒して、(A)アレンジする」の略です。
他社で行われている良いことは、どんどん取り入れて、自社に合わせて調整していくことを大切にしています。
針生社長が経営を引き継いだ時、労働時間は長いけれどあまり儲けが出ない状況でした。
そのような状況を打破し、利益を出していくために様々なビジネスモデルを参考にしました。
現在の主力商材であるカット野菜もその1つです。
常に謙虚な姿勢で「良いものは良い」と認め、学び、チャレンジしていく精神が当社の成長の原動力となっています。
現在、5.1haの「美里グリーンベース」では、1日3~4万株のレタス類を安定的に生産しています。
一方で、生産の担い手は平均20-30名程度です。これは、生産工程の9割が自動化されているが故に成せることです。
具体的には「舞台ムービングシステム」と名付けられた、育苗から栽培までを自動管理するシステムを導入しています。このシステムにより、ソイルブロック(当社オリジナルの培地。
美里グリーンベースの内部
詳細後述)の自動成形、発育に伴うガターの自動的な移動、ロボットによる苗の移し替え、AIによる環境制御等が行われています。また、ガターの洗浄やハウス天井の清掃等も機械やロボットにより自動化されています。
また、ガターの洗浄やハウス天井の清掃等も機械やロボットにより自動化されています。
一方、設備というハード面だけではなく、「ガターの間隔を生育状況に合わせて少しずつ広げていく」等ソフト面の工夫も行っています。
これらにより、一般的な露地栽培の80倍の生産効率を実現。安定した品質のレタス類を大量に供給することが可能となっています。
今後は、上記の当社オリジナルの生産システムを横展開していくことで、更なる供給量アップを目指しています。
ソイルブロックの自動形成
ロボットによる苗の差し替え
青果物や青果物加工品の販売では、商社を経由する取引が一般的です。
一方で当社は、高品質+供給力を武器に大手とのダイレクト取引も実現しています。
これにより、収益性が良くなることは勿論のこと、消費者に近い立場に立つことができます。結果的に「消費者目線」の商品開発にも繋がっていると考えられます。
セブンイレブンに供給しているカット野菜
自社ブランド商品
当社ではSDGsに資する取り組みを数多く行っています。以下では、代表的な取り組みについて記載します(省エネルギーの取り組みは後述)。
最先端技術を取入れることで、工程の大部分を自動化。
高品質の作物を大量かつ安定的に供給する生産システムを確立しています。また、生産コストが下がることで「リーズナブルに」世の中へ食料を供給し、貧困や飢餓を減らすことに、大きく貢献しています。
通常は培地にスポンジを使用します。一方で当社では、スポンジは環境への負荷が大きいことから、土を使った「ソイルブロック」を使用しています。
「令和の畑」として、条件や肥料、水を完全にコントロールするこれまでにない畑を目指しています。
ソイルブロック
工程の9割が自動化されていますが、人の手を必要とする工程もあります。特に自動で最終工程に到達するガターから作物を採取する作業では現在10名程度の方が携わっています。
人手を要する行程
当社では、毎月、最も作業スピードが速く、正確に作業する従業員を表彰する取り組みを行っています。
機械化・自動化された中でも、「人を大切にする」取り組みを行うことは、従業員のモチベーションや働きがいの向上に大きく貢献していると考えられます。
必要最低限の肥料を工場内で循環させるシステムを構築。地下水や河川等へ、肥料が一切流出せず川や海の水質を大切にする仕組みを採用しています。
太陽光を最大限活用できるよう、拡散性の高いガラスをハウスでは採用しています。また、夜間や天候不順時はLEDを活用することで、エネルギー使用を最小限にとどめています。
暖房や温水(ハウス上部のパイプ内を流れる)による温度調整をAIにより自動管理しています。その結果、エネルギー消費を削減しています。
ボイラー等により工場内で発生するCO2を野菜の生育に再利用しています(ハウス下部から再循環させている)。
省エネ設備の例
ハウス下部からCO2を再循環
上記以外にも、2020年からは美里グリーンベースが位置する中埣(なかぞね)地域の4つの農事組合法人が連携し、SDGsの取り組みを実践した「みやぎ米」を香港へ輸出しています。
具体的には、「中干し」の徹底(温室効果ガス削減が目的)や減農薬等、持続可能な農業を目指した取り組みを行いながら生産したお米です。
また、今後は地域で余剰となっている「籾殻」から「バイオ炭」を作る設備を本格的に導入する計画です(J-クレジット制度にも対応)。
「バイオ炭」生産時の熱の利用とバイオ炭の農地への活用を行い、カーボンニュートラルの取り組みを推進していく方針です。その他、トラクターの廃油の活用についても検討しています。
当社で行われている、その他の特徴的な取り組みを以下に記載します。
針生社長は若い頃から「数字」が得意でした。
そのような背景もあり、当社では1年を52週に分けて事業計画を策定しています。そして毎週、経営会議を行い「数字」の確認を実施。必要に応じて対応策を講じています。当面の目標として、数年以内に経常利益率10%、無借金経営への転換を目指しています。
当社では週2回全体で朝礼を実施。
そこでは、経営理念の読み合わせや従業員による1分間スピーチを行っています。
また、経営状況についても朝礼で従業員に開示しています。更に、朝礼の様子をYouTubeにアップ。社員やそのご家族が動画を閲覧できる状態にしています。まさに、道徳観を持って堂々(大義道徳)とした経営を行っているが故に出来ることです。
2022年に仙台市内のオフィスビルに「インテリジェンス・ラボ」を開設。
「広報分野の強化」や「生産性向上の取り組み」を行っています。また、優秀な若い「人財」を獲得するための拠点としての役割もあり、インターンシップ生の受入れも行っています。
インターンシップの様子
針生社長が経営を引き継いだ時は「家族を幸せにする」ために、経営改善に取り組んだとのことでした。
一方で現在の針生社長からは「日本の食料自給率を高めないといけない」、「食料を日本一安く作れる工場を目指す」、「農業会社から食料供給企業へ」、「40年後まで後継者を決めている」等のお話があり、視座の高さが印象的でした。
まさに「業界のトップランナー」であると強く感じました。
一方で、持ち前の「謙虚さ」や「人柄の良さ」で相手の「懐に入り込む」力も同時に兼ね備えている方だと感じました。
当社はSDGsの取り組みを数多く行っています。一方で、事業者の規模の違いにより、取り組めることに差はあります。
針生社長からは、まずは「JGAP」を取得することで、SDGsの取り組みを広く実践できるとのお話があり、非常に参考になりました。
次の世代のために一歩前へ進みましょう。
皆様からのご連絡をお待ちしています