株式会社トマトパーク徳島

  • 関連会社株式会社誠和
  • 作物トマト
  • 地域徳島県
当社概況

株式会社トマトパーク徳島は、資材メーカーである株式会社誠和のグループ企業の株式会社トマトパークの子会社として、2019年に設立された農地所有適格法人です。

栃木県にあるトマトパークが、徳島県から誘致を受け、徳島県と阿波市の協力のもと、阿波市の約2haの敷地に1.15haの栽培面積を確保。2020年から栽培を開始しました。
県内でも最大規模の施設園芸のハウス内では、カナバロ/フォルタミーノという欧州品種のトマト(以下カナバロ)を栽培。栃木で得た知見を、気候の異なる西日本の徳島で定着させるプロジェクトが始動しました。

農業栽培が盛んで施設園芸も多い阿波市に立つカナバロ栽培専用ハウス

農業栽培が盛んで施設園芸も多い阿波市に立つカナバロ栽培専用ハウス

スタートしたばかりの農場ですが、栃木で培った環境制御技術を駆使し、年間に400~500tほどのトマトを生産しています。
収穫量の8~9割を商社などと契約し販売しています。
カナバロは業務用の使用に向く品種で、切ったときのドリップの少なさや棚持ちの良さが特徴のため、大手コンビニチェーンやハンバーガーショップなどで採用されており、関西や中部、関東方面の商社が指定する加工工場などに出荷されています。

農場長の猿山さん(左写真)、中央は受粉で飛び交う蜂たちの巣箱

農場長の猿山さん(左写真)、中央は受粉で飛び交う蜂たちの巣箱

当園の強み

国産カナバロが珍しくそれ自体が強みですが、それを裏付ける2つの要素をピックアップします。

1)特徴的な品種(世界情勢)

もともと海外(オセアニア)から輸入をしていた品種で、2〜3週間ほどかけて船便で届いていた棚持ちの良さが特徴です。

昨今の円安による原材料の高騰、ロシア・ウクライナの状況悪化による輸送の不安定さから、業務用に向くトマトの輸入量が少なくなり、海外から原料を輸入してきた業者から、国内産の業務向けトマトを求める声が高まりました。コロナからの復活を進める外食産業や食品産業からの需要が増え、収穫量に比例して販売も安定してきています。

業務向けトマト

業務向けトマト

2)特徴的な品種(雇用関連)

日本で育種されたトマトに比べ、棚持ちが良い品種なので、収穫から出荷までのリードタイムを長く取ることが出来ます。
また、環境制御技術を駆使することで生育や果実の品質を安定させることができ、無駄な作業の発生を抑えたり出勤する人数に合わせて作業を調整することが出来ています。
パート従業員の中心となるのは子育て世代の方が多いため、作業は月曜日から金曜日までの5日間、作業時間は9~15時までが基本としています。
また、シフト制ではなく、学校の行事やお子さんの体調によって休みがちになる方でも家庭と両立できるような雇用環境を実現しています。

SDGsの取り組み

前述した柔軟な雇用体系が可能になったことで、持続可能な事業として、地元の雇用を生み、収益性も見込めてきました。

これは技術的・職業的スキルを地元に還元し、地元企業として根付くことにつながると考えての試みでもあります。現在の施設の規模での収益性を測りながら、栽培を進め、より収益性が高められると判断できれば、規模の拡大も視野に入れています。

また、大局で捉えた取り組みとして、ほぼ全てを海外から輸入してきたカナバロを国内で生産し流通できることは、フードマイレージの観点から、とても良い取り組みとなります。
また、世界の消費と生産における資源効率を改善させることにもつながります。
今後の世界情勢の変化によって、影響が出る可能性はありますが、安定した生産量の確保は国内流通の混乱を一定レベル招かずに済む要因となるでしょう。

省エネへの取り組み

LPガスの使用と排ガスを利用した炭酸ガスの循環
トマトパークの仕組みとして、加温のためLPガスを使用し、熱を作る過程で出た排出ガスをハウスの中に入れ、それを炭酸ガスとして施用しています。排ガスを利用することで排出する二酸化炭素を抑えています。

親会社である株式会社トマトパークで研究を行い、栽培をしてきたトマトを同様のエネルギー循環システムで別の場所でも栽培するという考えのもと、西日本の徳島で実現することになり、省エネ・脱炭素の実現に向かっています。

栽培棟の床面すれすれに何本も通る炭酸ガスのダクトには無数の細かい穴が開いている

栽培棟の床面すれすれに何本も通る炭酸ガスのダクトには無数の細かい穴が開いている

課題と今後

栃木と気候が異なることによる調整が必要です。
環境モニタリングの装置を導入し不要な時間帯の施用はしない、時期により換気窓を開けずに、濃度をため込んだり、換気窓が開く時期は開閉の度合いによって、外気と同じ濃度しか炭酸ガスを施用しないなど、制御をして無駄なエネルギーを使わないという取り組みを進めています。

栽培棟の床面すれすれに何本も通る炭酸ガスのダクトには無数の細かい穴が開いている

栽培棟の床面すれすれに何本も通る炭酸ガスのダクトには無数の細かい穴が開いている

その他

1)トマトの大きさ

トマトの大きさが、卸先の用途に影響してきます。
求められているのは均一の大きさ。
同じようなトマトの収穫ができるよう、房に咲く花の数を調整して大きさを管理します。カナバロは房の中で大きさが均一化できる品種で、ロスがとても少ない品種です。スタートしたばかりで栃木の研究実績を用いていますが、場所や施設が異なることもあり、光の量の調整など徳島特有のやり方を模索しています。

2)雇用の定着

スタッフの定着率を上げるため、働きやすい環境を作ることに重きを置いてきました。
女性が多いこともあり、休憩スペース、トイレ、更衣室など栽培棟以外のスペースも配慮しました。また、風通しのいい職場も心がけており、多様な意見を調整し、バランスをとって運営しています。

3)アカデミー

農場全体のマネジメントを農場長が担い、栽培は栃木にあるアカデミーを卒業したスタッフが管理しています。
任せられる人材を排出する教育にも力を入れており、すでに地元出身のスタッフが経営の中心メンバーの一人となっています。いずれ、地元出身のスタッフだけで会社を運営していけることができるのが理想です。地道な活動のひとつとして、地元小学校の社会科見学の場を提供しています。その中から興味持ってくれる人が現れてくれるのを期待しています。

結論

栃木での知見(トマトの生産と収益性)を徳島でも実現できるよう、スタートしたプロジェクトは、コロナ禍の立ち上げにもかかわらず、世界情勢の変化などによる販路の確保や収益性の見込みが立ち、安定して軌道にのる状況を作れるまでに至りました。

生産時におけるL Pガスの燃焼ガスをトマトの光合成で活用する炭酸ガスの循環が省エネと脱炭素に近づける取り組みとして確立しており、品種の特性と今後の世界情勢を睨みながら、収益性の向上を模索していくことで、法人としての目標と社会的な目標に到達できると考えられます。

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

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