有限会社山口農園

  • 作物ホウレンソウ、小松菜、水菜
  • 地域奈良県
当社概況

当社は1935年に現在の地で中山間農業による有機栽培生産を開始しました。2000年に有機JAS認証を取得したことをきっかけに、2005年に山口武氏(現顧問)と共に法人化を行い、当社を設立しました。

その後、2013年に現社長山口貴義氏が代表に就任しました。
経営手法を積極的に取り入れ、完全分業制を実現しています。地域から農地や耕作放棄地を預かることで圃場を拡大し、現在は105,000㎡の敷地に、170棟のハウスを管理しています。

当社圃場

当社圃場

現在、当社ではほうれん草、水菜、小松菜などを中心に10種の葉物野菜を生産しています。
原則、畝を設けず、ハウス一面に作付けをするなどの画期的手法で収量をあげ、年間約200トンの収穫を行っています。また、完全分業化により計画生産、計画販売を実現しています。

ハウス一面に作付けされた作物

ハウス一面に作付けされた作物

当社の強み

当社の経営上の強みは、主に以下の2つあると考えられます。

1). 積極的な経営的手法の取り入れ

当社では、様々な職業経験を持つ山口貴義社長のもと、従来の農業では非常識とされた経営的手法を積極的に取り入れています。代表的な例として、完全分業化が挙げられます。

従来型の農業では家族経営が常識であり、朝早くから夜まで家族全員で働いて、わずかな収入しか得られない非効率な側面がありました。
そこで、当社では「生産」「収穫」「調整」「営業」「総務」「教育」「加工」など農業の仕事を分類し、専門的に任せることで分業化を実現し、労働時間あたりの生産性を高めています。
また、月次会議を開催し、会議での決定事項を会社方針として、計画・実行することで組織的な運営を図っています。

当社で収穫された葉物野菜

当社で収穫された葉物野菜

当社社員集合写真

当社社員集合写真

2). 地域循環型システム

農業従事者が高齢化し耕作放棄地が増えている中で、当社は近隣地域から耕作放棄地を借り上げ、当社のアグリスクール卒業後更に研修後、独立する者への農地として提供することで、地域の農業を守り、地域の環境の保全に寄与しています。

また、有機農業、有機野菜の普及のため観光農園として、収穫体験などを積極的に受け入れています。

有機野菜の収穫体験の様子

有機野菜の収穫体験の様子

3). 廃棄ロス削減のための新商品開発

従来ならば、捨ててしまっていた「C品」を活用した新商品の開発を積極的にすすめています。
現在は、C品を活用したペーストや墨汁を開発中であり、将来的な廃棄ロス0を目指しています。

SDGsの取り組み

当社が現在取り組んでいると考えられるSDGs(省エネ関連は後述)のターゲットと内容は、次の3つとなります。

1)ターゲット.2.4「2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。」

地域の耕作放棄地を借り上げ、当社のアグリスクールの卒業生に譲り渡す地域循環型システムにより、同地域の自然環境を守り、持続可能な食料生産に貢献しています。

2)ターゲット.4.4「2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。」

当社に蓄積された有機栽培のノウハウを農業職業訓練学校「オーガニックアグリスクールNARA」にて受講生に伝えることにより、持続可能な農業の担い手の育成に貢献しています。

3)ターゲット.12.5「2030 年までに、廃棄物の発生を、予防、削減(リデュース)、再生利用(リサイクル)や再利用(リユース)により大幅に減らす。」

従来廃棄されていたC品に目をつけ、商品開発を進めることで、農業生産物の廃棄0の実現を目指しています。

当社社長山口貴義

当社社長山口貴義

省エネへの取り組み

当社の省エネへの取り組みのターゲットは以下の通りです。

  • ターゲット7.3 「2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる」
  • ターゲット3.9 「2030年までに、有害化学物質、並びに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる」

ターゲットに紐づく具体的な取り組み内容は以下の2つとなります。

1). 有機農業への取り組み

有機農業は、化学的に合成された肥料や農薬を使用しない農業であるため、慣行農業と比較すると環境負荷が小さな栽培方法といえます。
一方で、除草などに非常に手間のかかる栽培方法でもあり、日本の全高地面積の0.5%でしか実現していません。
当社では、早くから無農薬農業をスタートし、その栽培に関する知見を蓄積してきたことで、完全有機栽培での農園経営を実現しています。ハウス内にもあえて暖房等を導入せず、水と風通しの調整により、安定的な栽培を実現しています。

中古品や代用品の活用

海上コンテナを柱とした堆肥場

海上コンテナを柱とした堆肥場

当社の圃場で利用するハウスの骨組みは近隣の廃業した農家から譲り受けたものも使っています。

また、倉庫は廃車となったトラックを再利用する、中古の海上コンテナを安価で仕入れ、堆肥場の柱として代用するなど、積極的に中古品や代用品を活用することで、建設時にかかる環境負荷を軽減しています。

その他

堆肥は近隣の牧場から、米ぬかは地域の米農家、ウッドチップはシルバー人材センターから仕入れるなど、資源の面でも地域循環型のビジネスを構築しています。

結論

ビジネスとして論理的な判断のもと、従来型農業の無駄やムラの排除に取り組む一方で、将来の見えない仕事は続かないとの考えのもと、積極的に従業員の労働環境の改善と「やりがい」の追求をしている点が印象的でした。

社長の理念と将来へのビジョンを行動レベルに落とし込み持続可能な農業を実現している好事例でした。 

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

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