井戸謙二氏(以下井戸氏)はJA大阪泉州三つ葉部会会長を務めています。40年前に父の後を継いで就農し、家族2名とパートにより営農中です(パートは常時1名、繁忙期は3名)。
井戸氏の父親の代から三つ葉生産を開始。
ハウスを使った当時では先端農業であり、貝塚市4地区で三つ葉の生産団地を組成。現在も月次で情報交換を行う等産地ブランドの維持・発展に力を入れています。また、大阪府エコ農産物認証(農薬化学肥料5割減)を取得済みです。
経営規模はハウス3棟(15a)で溶液栽培を行っており、昨年の出荷量は20t程度です。
ハウス全景
井戸氏
井戸氏が経営で心がけていることは、見た目に美味しい、ツヤのある作物づくりです。
農薬化学肥料5割減のエコ認証を取得し、安全・安心な農産物の生産を供給することは農家の責務と考えています。
農薬化学肥料の使用を抑制することは、それだけで手間がかかることになるのですが、井戸氏はそれに加えさらに見た目の美しさも追及する、こだわりの生産を行っているのです。三つ葉は管理が悪いと根が黒くなり、ツヤがなくなりますが、そうした商品は絶対に出さないという強い信念が、見た目に美味しいツヤのある生産に繋がっているのです。
また、貝塚地区の生産者とは月次で栽培方法や資材、農薬等の生産に関する意見交換を行っており、常に生産技術に関する情報のアップデートも井戸氏の良い商品作りの根幹を支えています。
根が白くツヤのある三つ葉
井戸氏は既に大阪エコ農産物認証(農薬化学肥料5割減)を取得しており、施肥・投薬管理の他にも、防除記録やトレサビも日ごろの営農活動の中で当たり前こととして実施しています。まさにSDGsの先端の営農を実践していることになります。
溶液管理については、水を入替えると育成は良くなりますが、その分水道と肥料および電気代が嵩むこともあり、生育とコストの両面を勘案し現在は年1回の水の入替にとどめ、結果として水やエネルギーの節約になっています。さらに、水温管理にはヒートポンプを導入し、CO2削減に寄与しています。
鉄骨ハウスは築30~40年経過していますが、生産には支障がなく、できる限り使い続ける予定にしています。またフィルムも12~13年は経過していますが、貼りっ放しで、必要に応じ修理を重ね大切に利用している等、資材を大切に利用しています。
元々溶液の温度管理にはヒートポンプを活用していたのですが、昨今のエネルギーコストの上昇を受けて、現在は室内の暖房使用を抑制しています。
室内温度は18℃が適温なのですが、今年は暖房使用を控えることで室温が低下しているため、育成期間が長期化しています。
年間8回の出荷回数を維持するために、出荷~育苗の期間調整に工夫をしています。
また、天窓は25℃設定で自動開閉システムを導入、遮光カーテンは手動で調整しています。こうした工夫等により、A重油代と電気代の合計エネルギーコストは数パーセントの上昇に抑えられています。
加温機
培地と送風システム
貝塚市の三つ葉生産農家は4地区で団地を形成しており、泉州みつばとしてブランド化しています。
地区農家はみな大阪エコ農産物認証を受けており、月次で情報交換を継続している等SDGsに関する先進的な取組農家同士がお互い交流する場があるのは大変貴重です。
井戸氏は三つ葉農家としては2代目に当たり、父親の代からの生産手段と生産方式を引き継いでいますが、井戸氏の経営において特徴的なことは、貝塚地区の三つ葉生産農家との結びつきです。
先代が三つ葉生産を開始した時期に、貝塚地区で三つ葉生産の団地化が図られ、産地としての基盤が形成されましたが、スタート当初からの横のつながりが現在でも継続しており、生産者間の月次での情報交換会が開催されています。井戸氏の所属するJAでは大阪エコ農産部認証の推進に積極的に取り組んでおり、井戸氏の周囲にも認証取得している農家は多数存在しています。
そうした環境下で農業を行っていることで、減農薬減化学肥料による生産、さらにトレサビへの取組等々これから農業に求められる取組を、井戸氏自身は自然に当たり前のこととして取り組んでいるよう思えます。
もちろん、井戸氏は部会長であることから特に率先して優れた取り組みを行っていると思われますが、SDGsに対して地域ぐるみで取り組む重要性を認識させられる好例です。
次の世代のために一歩前へ進みましょう。
皆様からのご連絡をお待ちしています