(株)リアスターファーム

  • 作物イチゴ
  • 地域岩手県
概況

㈱リアスターファーム(以下当社)は、岩手県の三陸沿岸3地域(陸前高田市、大船渡市、宮古市)を拠点に、「さんりく星苺」というブランドで夏イチゴの通年生産を行っています。

3農場合計80a強の生産面積で年間30トンの収穫量を目標にあげています。

当社は東日本大震災の復興特需が一巡した当地区において、地域の産業として陸の産業を成り立たせ、従業員に還元ができる農業を実現したいという思いから、太田社長が2018年に個人で起業、2019年に法人化しました。
社員数は3農場合計で13名です(正社員5名、パート8名、2023.3現在)。

当社の強み

当社の強みは、夏イチゴの通年生産にあります。気候条件等から日本での夏イチゴ生産は北海道・東北などのごく一部に限られ、国内流通は極めて品薄になります。

当社では、そうした夏イチゴの希少性に着目し生産することで、洋菓子店、ホテル、カフェ等の国内夏イチゴの需要を取込むことに成功しています。その希少性のため当社では特に営業を行わなくとも、口コミ等による受注は絶えず、収益性が高い農業を実現しています。

もちろん、生産が難しいことが希少性を生んでいるのですが、夏冷涼で冬寒過ぎずに日照時間が長いという当地の気象特性を最大限生かした、独自の周年栽培技術が当社の戦略の根幹にあります。

SDGsの取り組み

当社は被災地に新しい産業を根付かせ、従業員に還元するという経営理念であり、SDGs目標の「8.働きがいも経済成長も」、「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」。「11.住み続けられるまちづくりを」が当社の目指す姿そのものになります。

地域のつながりを重視する当社では、夏イチゴの産地形成を目指し、大船渡の農場を担い手育成拠点と位置づけ、当社の栽培技術を習得するための新規就農人材の育成に取組んでいます。
さらには地元の小学生を対象にした施設見学会を実施し、地域との交流にも気を配っています。

当社のハウスは耐候性の木骨ハウスという極めてユニークなハウスです。
ハウスに使用される木材は地元の気仙杉のB材や間伐材であり、地域資源の循環活用になります(施設面積の10倍以上の森林管理に寄与します)。
木骨は鉄骨に比べ輻射熱が抑えられ、かつ廃材の利用も簡単です。
また、木材使用により資材製造時のCO2排出量は鉄骨ハウスの1/20程度に抑制されます。

ハウス内においては、独自で考案した高設L字型ベンチを採用しています。高設にすることで、従業員が作業をしやすい環境を整えています。また、有機JAS系の農薬や天敵活用により化学農薬の使用の抑制に努めています。

当社木骨ハウス外観と内観

当社木骨ハウス外観と内観

省エネへの取り組み

夏場の暑熱対策としては、まず木造ハウスであることで、内部温度は鉄骨ハウス比2~3℃低くなります。
さらに、ハウス側面の開閉、遮光カーテン。ミスト噴射、大型換気扇等の設備を設置しています。また、当地は海からやませが吹くことから、ハウスでは海側から山側へ風が一方通行で流れるような作りにし、最大限自然の風を利用する工夫を凝らしています。
冬期の対策としては、ヒートポンプのハイブリッド運転をしている他、ハウスの内張りの2重化や外張りの裾断熱により保温効果を高めています。
ハウス内の装置は温度や湿度センサーでキャッチし、全て自動で作動し、最適な生産環境を保持しエネルギー効率の最大化を目指しています。

高設L字型ベンチは、高設で作業のしやすさだけでなく、日照が確保しやすいというエネルギーコスト上のメリットもあります。

環境制御システム

環境制御システム

ヒートポンプ

ヒートポンプ

その他

当社は将来的には、地域に夏イチゴの一大産地を形成したいと考えています。
協力農家が収益を出せるための技術指導はもちろんのこと、新規就農者が生計を立てる目安となるため収益モデルまで作成し、支援する体制を整えています。

結論

当社は地元の木材を活用した木骨ハウスの活用により地域森林資源の循環を実現し、脱炭素の取組や省エネルギー効果を実現させるという大変ユニークなシステムを採用しています。SDGsの取組と収益性向上が両立する好事例と言えます。

さらに、当社は国内では希少であり収益性の高い夏イチゴの周年生産化に成功し、当社自身の規模拡大による雇用への貢献の他に、新規就農者への技術供与により、地域全体での新規産業化を目指しています。震災により失われた地域経済の再生に向けた大きな貢献が期待されます。

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

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