㈱アグリいーな田んぼアートの里(以下当社)は、田舎館村の活性化を目的にした田んぼアートの里ブランド化推進事業におけるパイロットファーム整備事業から生み出された会社です。
田舎館村では平成5年から始めた「田んぼアート」がふるさとイベント大賞を受賞し、観光農業の里として知名度を得る一方で、昔からの主産業であるコメとイチゴについては、生産者数が減少傾向にあったことから、農業の高付加価値化と雇用拡大、そして観光農園として通年稼働することで観光客を呼び込み、地域ブランド力の向上を目指し平成30年に設立されました。
当社は観光農園用のハウス13棟の他育苗用ハウス等があります。昨年の年間の入場者数は4,000人強で、冬イチゴの入場が8割を占めます。従業員は8名でうちパートが5名になっています。
当社外観:左 当社HPより。 右 今回撮影 雪景色の中で営業中
当社の強みは、夜間の気温低下や雪の降り積もる冬場も、近隣にある温泉施設の温泉熱を利用することで通年でイチゴの生産を行い、観光農園の運営ができることです。
12月~6月は甘く粒の大きい冬イチゴ、7月~11月は甘酸っぱい夏イチゴの生産と季節により種類を分けており、リピート需要も取り込んでいます。
また、現在利用は少ないものの、観光いちご園ではイチゴオーナー制度も実施しており、当社のファンづくりを目指しています。
当社は地域活性化プロジェクトから生まれた会社です。
従って、設立当初からSDGsのゴールの「8.働きがいも経済成長も」、「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」「11.住み続けられるまちづくりを」の達成を目的にしています。
官民一体のプロジェクトとしてスタートしたことから、社名には村の一大イベントである「田んぼアート」を冠し、農園の場所も田んぼアート会場に隣接と、地域の観光産業の一翼を担う存在として位置づけられています。
従って、温泉熱を利用しての暖房システムについても、当社の設立プロジェクト検討段階からシステムとして取り込まれていました。
プロジェクトを通じ、雇用を確保するとともに、昔からのイチゴの産地として存続を目指しています。現状イチゴは外販等することなくほぼいちご狩りで消費されており、今後もハウスを増棟予定と事業は順調に拡大しています。
生産面で特に気を配っていることは、化学由来の農薬使用の抑制です。うどん粉病に悩まされていましたが、植物由来の活力剤を使用してからは、うどん粉病の発生が少なくなり、農薬散布量も減らすことができています。
また、観光農園だからという面もありますが、当社の施設は全て高設栽培であり、農園で作業する人たちが作業しやすい環境も実現できています。
佐藤社長と従業員:当社HPより
イチゴ狩りの風景:当社HP写真を加工
当社の最大の特徴は温泉熱を利用した省化石燃料の暖房システムです。
概ね11月から3月までの期間は、近隣の温泉施設から温泉を引き込み、ハウス内を循環させて暖房として利用しています(地域活性化プロジェクト支援により温泉使用量はポンプ稼働の電気代のみとなっています)。当初は温泉熱をハウス地面に通していましたが、温泉熱の温度だけでは厳冬期に十分な室温を確保できなかったことから、現在は地中だけでなく、培地ベンチ直下で温泉を循環することで室温を確保するようにしています。
また、ハウスの外張りを2重被覆化する他、培地ベンチそのものを直接被覆する等の工夫により、エネルギーコストを抑制しつつも最適な生育環境を整えています。 夏場の暑熱対策としては、特に冷房システム等は使用せず、ハウスの側面開放のみで十分対応可能となっています。
なお、温泉の使用量は上限が定められていることから、将来的にハウスを増加させる際には、ヒートポンプの導入を検討しています。
培地ベンチを被覆
培地ベンチ直下の温泉循環システム
当社の生産したイチゴのほとんどはイチゴ狩りで消費される等観光農園として事業は好調です。今後は冬イチゴ中心に徐々に農園を拡張していく予定です。
村の活性化を目指したプロジェクトから誕生した当社は、正に地域一体となった取組が功を奏し、地域のリピーター需要に支えられ順調に事業を拡張しています。
イチゴの産地としての存続、雇用の創出、観光需要の拡大等、過疎化に悩む地域における持続可能な産業育成化の優良な取組事例と言えます。
次の世代のために一歩前へ進みましょう。
皆様からのご連絡をお待ちしています