有限会社松崎農園

  • 作物すだち、胡蝶蘭
  • 地域徳島県
当園概況

松崎農園は、昭和初期に現代表の祖父が山を切り開き露地のみかん栽培からスタートした農家。

2代目の先代が有限会社を立ち上げ、現代表が3代目として、花卉と果樹の施設園芸に従事しています。

みかんは別の方に引き継いでもらい、現在は平成元年から始めた胡蝶蘭と徳島特産のすだちをハウスで栽培しています。
現在、胡蝶蘭はV3と恋姫の2種、すだちは収穫期が3月から4月にかけてのひと月だけ出荷しています。

堤防脇に林立する胡蝶蘭の施設園芸ハウス

堤防脇に林立する胡蝶蘭の施設園芸ハウス

胡蝶蘭のハウスから少し離れた場所に立つすだちのハウスは二重で温度と湿度を管理

胡蝶蘭のハウスから少し離れた場所に立つすだちのハウスは二重で温度と湿度を管理

胡蝶蘭はハウスを3段階の温度帯にわけ、購入した苗から1年半かけて育てて出荷します。
コロナ禍で激減した出荷量も、ようやく回復し、昨年は年間12000鉢、2500万円の売り上げとなりました。
その9割を市場に卸しており、1割は顧客に直接販売しています。花もちの良さを知っているリピーターがおり、利益率も直接販売の方が高いのですが、お金の管理と発送に、想像以上に手間がかかるため、現体制ではベストな販売配分になっています。

出荷までもう少しの胡蝶蘭

出荷までもう少しの胡蝶蘭

集荷前の胡蝶蘭と代表の松崎さん

集荷前の胡蝶蘭と代表の松崎さん

すだちは2棟のハウスで栽培しているため、収量は限られています。昨年は徳島県全体の収穫量が少なかったため、3200kgのすだちが高単価で販売できました。利益率も高く、珍しい年でした。

出荷まであと3週間ほどのすだち(左写真)とすだちの木々の間にある重油ボイラー

出荷まであと3週間ほどのすだち(左写真)とすだちの木々の間にある重油ボイラー

当園の強み

胡蝶蘭は花もちが良いとされ、出荷後2〜3ヶ月は咲いています。
また、すだちは施設園芸栽培の最初の出荷時期にあたるため、比較的単価も高く、高級料亭に並ぶような良質のすだちを出荷しています。それらを詳しく説明します。

1)花もちの良さ(苗と温度設定)

スタート当初は品質がまちまちな苗を取り扱うことになり、初めてだったこともあって、いい完成品を出荷するのが難しい状況が4〜5年ほど続きました。
その後、苗の仕入れ業者を1本化し、栽培の温度調整の知見もたまったことで、少しずつ安定供給ができるようになりました。
苗場は25度、出荷床は18〜19度、花を咲かすハウスはゆっくり咲かさないと花の数が変わってしまうため16度に設定します。
1年半をかけて丁寧に育てることで、お客様の手元で2〜3ヶ月の花が咲く良質の胡蝶蘭を提供できるようになりました。

2)販売時期

すだちは3月から施設園芸→露地→冷蔵物の順にほぼ通年で販売されている徳島の名産です。
この最初の時期である3月中程から出荷をし、4月中ほどまでで3000kgを超えるすだちを売り切ります。この時期のすだちは出荷量が少なくおいしいと好評で、高級料亭などに出回ります。一般の食卓に上ることはあまり多くありません。

16度設定でじっくり育てるハウス  25度設定の苗床ハウス

16度設定でじっくり育てるハウス 25度設定の苗床ハウス

SDGsの取り組み

1)ロスをなくす取り組み

胡蝶蘭&すだちともに、無駄なエネルギーを極力少なくし、さらに商品のロスを少なくするために、3年ほど前からJAの情報提供を受け、室温と湿度のセンサーをハウス内に設置してデータ管理しています。
自宅や他の場所でもスマホで確認できることで、それまでハウスに誰かがいない限りわからなかった電源のつけ忘れやつけっぱなしなどがわかるようになり、人為的ミスによるロスが少なくなりました。

2)生産性と働きやすさの向上 その1

胡蝶蘭の生産性を上げるために出荷用の花を立たせるための針金を切る電動のチッパー「エアチッパー」を導入。
作業が格段に速くなっただけでなく、手動の場合はスタッフが腱鞘炎になってしまうほどの力が必要でしたが、簡単に切れるようになり、生産性と働きやすさが向上しました。

3) 生産性と働きやすさの向上 その2

胡蝶蘭は高級なイメージを持たせるため、陶器の鉢を使用して出荷してきました。
ただ、とにかく重くて運ぶのが大変。かつ割れてしまうリスクもありまた。
プラスチックに変更したことで、軽くて運べやすく、割れにくく、捨てる場合もプラで捨てられます。
さらに鉢の中で花や鉢金の支柱を刺すための発砲スチロールを特注で製造し、軽く、早く出荷準備ができるようにしています。

省エネの取り組み

バイオマスボイラーの利用(胡蝶蘭)

バイオマス(木くず)ボイラーを徳島で製造しているトヨタエンジニアリングが県の補助金の対象社になり、ボイラーを使う場所を探していた際に松崎農園を訪れ、8年前に10年契約で導入。
化石燃料を使わないバイオマスの導入で、実質CO2を排出しない栽培を実施。当時は重油の価格と差異がありませんでしたが、試験運用的な導入のためメンテナンス費がかからず、ランニングコストは重油の6割ほどで、使用データの提供を条件に導入を決めました。
燃焼後の灰も大量に出ることもなく、自然のものなので再利用も可能。

バイオマスボイラーの全景  木屑を燃やし、熱を作る部分

バイオマスボイラーの全景 木屑を燃やし、熱を作る部分

省エネの取り組み

苗と栽培(胡蝶蘭)

苗は台湾から輸入しています。苗の生育具合で、原価、徳島での栽培期間が異なります。
以前は一番小さい苗を購入して3年をかけて出荷していましたが、栽培期間中のコストと検討し、1年半の栽培で出荷できる中苗に変更しました。
大苗を高値で購入し、出荷までの期間を短くする農家もいます。ただ、バイオマスボイラーが使える利点があり、栽培期間の温度管理をして良質の胡蝶蘭を出荷するために、1年半の室温調整が松崎農園では最適なやり方だと考えています。

結論

できるだけ無駄のないようにセンサーを設置し、スマホで管理するスマート農業を導入し、他では使用できないバイオマスボイラーでの加温ができることで、小規模農家ながら、胡蝶蘭とすだちの栽培でSDGsの対応と省エネ&脱炭素を実現できている松崎農園。

マーケットの状況によって収益性が異なる不確定要因は常にあるものの、良質な花卉と果樹を丁寧な栽培手法で提供しており、今後もバイオマスによる脱炭素の推進役として、続けていただきたいと思います。

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

皆様からのご連絡をお待ちしています

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