密植栽培とLED補光を組み合わせることで独自の栽培方法を確立しました。
トマト栽培における密植栽培は、相互遮蔽による光量不足で減収することからタブーとされていますが、そこにLEDインターライティングで補光することで高品質・高収量を実現していることが大きな強みとなっています。(左写真)
創業者は、1984年に国立宇都宮大学農学部卒業後、福井県農林水産部職員となり、2007年に依願退職し、同年5月に株式会社無限大を設立。
福井県内では初めてとなる黒豆の枝豆の大規模栽培を開始しました。しかし、枝豆は栽培期間が限定されているため、優秀な人材を永続的に雇用できる環境整備が経営上の課題でした。
又、同じタイミングで県や町では「電力を使った通年型の農業生産の実践」を重要な施策としていました。そこで周年栽培を目指して、2017年にLED補光機器を備えたトマトハウス「Tomato LABO Fairy Bell」を開設しました。
2021年には農業電化推進コンクールで大賞(農林水産省生産局長賞)を、2022年には全国優良経営体表彰で農林水産省経営局長賞(生産技術革新部門)を受賞しました。現在、温室4棟では0.6haでミディトマトを、露地では延べ42haで枝豆、牧草、水稲を栽培しています。
トマトハウス「Tomato LABO Fairy Bell」
夕暮れの「Tomato LABO Fairy Bell」
枝豆調製出荷施設
マーケティングにおける強みは、主に以下の3つを挙げることができます。
密植栽培とLED補光を組み合わせた独自の栽培方法
密植栽培とLED補光を組み合わせることで独自の栽培方法を確立しました。
トマト栽培における密植栽培は、相互遮蔽による光量不足で減収することからタブーとされていますが、そこにLEDインターライティングで補光することで高品質・高収量を実現していることが大きな強みとなっています。(左写真)
ミディトマトや枝豆の他に、米や牧草を栽培することにより、1年を通して収益を確保しており、経営の安定化に努めています。
取扱商品
取扱商品
3).上記にて具体的な取り組み内容を挙げました。これらの根幹となっているのは「創業者自身の情報収集力と行動力」でありここが一番の強みと感じました。
現在取り組んでいると考えられるSDGs(省エネ関連は後述)のターゲットと内容は、次の5つとなります。
市場に回せないトマトを冷凍保存し、学校に給食食材として、又ソース原料として小売店などに販売することで収益化するとともに廃棄ロス削減に努めています。
ハウス内で水を循環利用し足りない分を井戸水で補うことで、外への排水を0にしています。
周年栽培を実現することで雇用の安定化を図っています。また、通常の有給休暇とは別に「リフレッシュ休暇」「ファミリーサポート休暇」などの特別休暇を導入し、働き方改革に取り組んでいます。
また、全従業員が女性であり、機械化を進める一方、作業分担と適材適所の人員配置、役員や部門リーダーへの登用を行うことで能力の開発と生産性の向上に努めています。
トマトの選別
作業用ドローン
金属探知機による異物検出
さらに、枝豆後作や利用率の低い農地、遊休農地で牧草(ラップサイレージ)を生産し、地域内の畜産農家に供給することで自給粗飼料の地域内調達を支援しています。牧草生産は、枝豆生産圃場の土壌改良効果にも寄与しており、連作障害回避や生産力の増強に役立っています。
枝豆の選別工程には、作業員の労働負担を軽減するための高性能自動化装置の配置や機械と人間が共生した作業を行えるよう人間工学的視点から全国に類のない独自の選別ラインを構築しています。
外国人技能実習生及び特定技能外国人の受け入れを行っています。
誘引用紐を巻いたボビン(プラスチック製)は、紐(2作分)を巻いた「商品」を購入し、紐の消費とともに廃棄されるのが一般的であるが、県内製糸関連業者の協力を得て製造した「糸巻き機」により、ボビンのリユースを実践しています。
当社の省エネへの取り組みのターゲットは以下の通りです。
ターゲットに紐づく具体的な取り組み内容は以下の4つとなります。
ヒートポンプと灯油による暖房設備をハイブリッドで稼働させ、メインとなるヒートポンプの暖房力の不足分を灯油で補うことで化石燃料の使用削減に努めています。
環境制御システムと暖房用送風ダクトの配置の工夫・改善により、ハウスの保温を効率的に行いエネルギーコストの削減に努めています。
収穫直後に圃場で保冷車による予備予冷を行うことで、コンテナ冷蔵庫による本予冷の効率を高め、冷蔵負荷の軽減(消費電力の削減)に努めています。
これらの取り組みの背景には、創業者が大事にしている「先を見据えた上で、今できることに全力に取り組む」というマインドセットが大きく寄与しています。
省エネというワードに固執するのではなく、日々の経営の課題に対してトライ&エラーを繰り返した結果、現在の取り組みに辿りついたとのことです。
今後、既存の技術に加えて新たに管理労力が軽減される従業員にバリアフリーな「低段密植栽培」や暖房に係るエネルギー源に化石燃料を使用しない「木質ペレットボイラー」を導入したハウスを建設予定です。ここでの技術や商品を通して感動をお届けできる「意味のあるトマト」として社会に提案していきたいと仰っていました。
又、その先には当社に蓄積された「生産~商流」のナレッジを提供することで新規就農者のハードルを下げ、農業人口の拡充にも寄与したいとも仰っておりました。
上述のように「先を見据えた上で、今できることに全力に取り組む」ということを非常に大事にされていました。
今後、これらの取り組みに対するコスト回収をどう行っていくかということが課題となります。欧米に比べて日本国内ではまだ、「有機栽培」「SDGsへの取り組み」に対する消費者のニーズが低いのが現状です。
「価値を見出せないものには価格を付けられない」という原則がある以上、生産側に省エネを啓発するだけでなく、消費者側へのマインドセットの変化を促すことが重要であると感じました。
次の世代のために一歩前へ進みましょう。
皆様からのご連絡をお待ちしています