山本義之

  • 作物
  • 地域奈良県
当社概況

当社は1930年代に創業し、80年以上続く柿農家です。同地域は日本でも有数のハウス柿の産地ですが、山間部に位置することから1件あたりの圃場は小さく、家族経営を行う小規模生産者が大半です。

そのため、「部会」を組織することで密に情報共有を行い、生産から出荷までを地域で一体となっています。

山本義之氏は、「JAならけんハウス柿部会」の六代目部会長(2023年2月現在)として、同地域生産を取りまとめ、高品質な柿の安定的生産に寄与しています。

山間部に位置する当社の圃場(露地)

山間部に位置する当社の圃場(露地)

現在、当社では2棟のビニールハウス内で柿を生産するほか、露地でも柿や梅を生産しています。年間の収量は柿が約100t、梅が10tで、全量をJAへ系統出荷しています。

当社で生産されたハウス柿

当社で生産されたハウス柿

当社の強み

当社の経営上の強みは、主に以下の2つであると考えられます。

1). 柿のハウス栽培による生産の安定化

奈良県では1975年頃から柿のハウス栽培が行われていました。
当社でも早くからハウス柿栽培を取り入れることで、天候の影響を抑え、年間を通じて安定的生産が可能となっただけでなく、露地と時期をずらすことで収穫作業の平準化を実現しています。

2). 部会を通じた近隣生産者との情報共有

柿は、天候により品質や価格に影響を受けやすい農産物です。ならけんハウス柿部会では、年に3回の花芽巡回にて、同地域の圃場を巡回し、柿の生育状況を確認するとともに、生産ノウハウに関しても地域生産者と密な情報共有を行っています。

一般的な部会で行われている共選共販体制の構築にとどまらず、生産においても地域が一体となって高品質な柿を安定的に出荷するための取り組みを行なっています。

蕾がつき始めたハウス柿

蕾がつき始めたハウス柿

SDGsの取り組み

当社が現在取り組んでいると考えられるSDGs(省エネ関連は後述)のターゲットと内容は、次の3つとなります。

1). ターゲット2.4「2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。」

「部会」を組織することで地域で一体となって、柿生産のノウハウを共有し、安定的な食料生産に寄与しています。

2). ターゲット8.5「2030年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する。」

収穫作業の負荷を低減するために、ハウス内の木はなるべく低くなるように冬の時期から剪定を行なっています。
また、夏場の作業においては空調服を導入するなどして、少しでも労働環境の改善を図っています。スピードスプレイヤーなどの農業機械を積極的に導入することで生産性の向上を図っています。

当社代表山本義之氏

当社代表山本義之氏

省エネの取り組み

当社の省エネへの取り組みのターゲットは以下の通りです。

  • ターゲット7.3 「2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる」
  • ターゲット3.9 「2030年までに、有害化学物質、並びに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる」

ターゲットに紐づく具体的な取り組み内容は以下の2つとなります。

1). ハウスのマメな管理による燃料使用量削減

ネポン社ハウスカオンキ

ネポン社ハウスカオンキ

同社では冬季のハウス内の温度管理のためにネポン社のハウスカオンキを導入しています。

しかし、暖房に頼るのではなく、性能の良いビニールを使う、カーテンは二重にする、ビニールの隙間を埋め暖気が漏れないようにする、1日4回のハウス温度のモニタリングを実施するなどの日々のマメな管理により、重油燃料の使用量の2割削減を実現しています。

2). 化学肥料や農薬使用量の削減

当社では鶏糞を使い、化学肥料使用量を極力減らす努力をしています。

また、ハウス内はネットで防虫することで虫が寄りつかないようにし、農薬使用量も極力減らすようにしています。

その他

ハウス栽培の技術は日進月歩であるため、講習会等には積極的に参加し、最新の技術を積極的に学ぶようにすることで、経済的に効率的な生産を行うと同時に自然環境にも優しい生産を目指しています。

結論

インタビュー時に「当たり前のことで大したことはやってない。」と繰り返し言っている姿が印象的でした。
圃場を見学すると倉庫が綺麗に使いやすく整理されているなど基本に忠実に行いながらも、同時に新しい技術は積極的に取り入れ、生産されているように感じました。生産者にとっての当たり前が実はSDGsにもつながっていると感じる事例でした。

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

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