せきね農園は、正確な記録がないものの江戸時代から300年以上続く農家(個人事業主)で、現在9代目が代表を務め、施設園芸等に従事しています。
桃の果樹園の一部を整地して2015年にハウスを建設。1080㎡ある室内(降雪のため傾斜のある屋根を採用。中央部分の高さは9m)でアボカドを栽培しています。7年前の竣工時から育てた木(苗木から)など、現在、40種のアボカドの木が立ち並び、雪国新潟でマニュアルのない試行錯誤の栽培を続けています。
桃園に併設する形で立つアボカド栽培用ハウス
アボカドの年間収穫量は毎年10%ほど増えており、その99%をECで販売しています。農園から全国各地に直送しており、一部、都内の百貨店に卸すこともあリますが、ネット流通で直接販売することで、扱い方や食べ方をお伝えしながら丁寧にファンを増やしています。
ハウス内の様子
国産アボカド自体の流通が多くないことがそもそもの強みですが、それを裏付ける2つの要素をピックアップします。
寒暖差が美味しさを決めると言ってもよいアボカド(メキシコの特産地は標高2000mの高地)は、雪国新潟の気候と施設園芸での栽培が絶妙にいいバランスであることが実証できています。
しかしながら、当地での栽培は全くのゼロベースだったため、7年間の試行錯誤における知見と経験が当園の圧倒的な強みであり、それを生かしつつ、生産性や美味しさの向上を求め、さらなる挑戦を続けていく情熱も強みと言えます。
また、同地域で盛んな果樹栽培などの栽培における最新情報に簡単にアクセスでき、取り入れられるのも強みのひとつ。
ほぼすべての販売をECで完結させています。
つまり、出荷できるすべてのアボカドを全国のお客様に販売できる(完売)のが強みです。単価はそれなりにするものの、中間マージンがなく、直接、お届けできることから、食べごろまでの扱い方や食べ方に至るまで、きめ細かくお伝えできることで美味しいアボカドを味わってもらえるのです。
せきね農園ECサイト
代表自らが立ち上げ、デザインやテキスト作成、更新もすべて自ら行っているECサイト。ネーミングや商品のパッケージデザインまで自前で手がけています
当園のアボカド
大局で捉えた取り組みとして、日本の輸入果物量のランキングで6位に位置するアボカドは、メキシコから船で運搬しており、流通におけるCO2排出量をなくすことに貢献できていると考えられます。地産地消のメリットのひとつで、グローバルなSDGsの観点からは小さな規模感ですが大きな一歩と言えるでしょう。
施設園芸という観点では、寒暖差を作るため、重油を使った暖房を利用しつつ、電気によるヒートポンプを併用することで、エネルギーの効率的な利用を実現しています。重油を使った暖房では10度単位のセンサーで温度管理を行っていますが、1度単位で温度管理ができるヒートポンプが効率的に温度を保つことで、無駄に重油を使わない制御ができています。
重油を使った暖房器の下に設置されたヒートポンプで室内温を制御
前述したSDGsの取り組みに関連して、重油を必要以上に使わないことでCO2削減を行っているだけでなく、電気と組み合わせ1度単位での温度調整を行うことで、無駄なエネルギーの消費をなくしてきました。
また、前述のように、毎年10%程度、収穫量を増加させているにもかかわらず、燃料単価が高騰していても暖房費はほぼ一定に抑えられています。
加えて、低音障害にならない温度を探るため、下限温度の実験も1度単位で繰り返しており、収量あたりのエネルギー使用量を下げることに成功しています。
日照などによる室内の気温上昇はありますが、外気温が下がれば、室内の気温も下がるため、館内の横面を2枚、木の上を3枚のビニールシートで多い断熱対策を講じています。
ビニールシートによる断熱対策
水を多く使う作物として知られているアボカドは、水をいかに効率的に根に与えるかが重要。
通常の土壌でそのまま栽培した場合は、無駄に水を土壌に与えてしまうことになり、ポットでの栽培を採用しました。栽培を続けながら常に適量を模索しており、効率よく水を与えるため、少量で回数を増やす制御を行うことが生育につながることがわかってきました。
アボカドは最も栄養価の高い果物と言われています。がゆえに、土がやせる作物でもあります。
土壌に直接植えることで、やせた土壌の入れ替え等をせず、ポットの土で栽培を完結させることで効率よく栽培を行っています。
現状はポットから水が出ることもあるため、パレットを敷いています
メキシコと中央アメリカが原産とされるアボカドは当初は低温に弱いとされてきました。メキシコから輸出されるアボカドの品種はそのほとんどが「ハス」と呼ばれている品種。
当園では現在、40種類のアボカドを栽培しており、生育状況を丁寧に見ながら、雪国新潟で最適な品種が何か、最適な栽培方法は何かを検証しています。
1万の花が咲いても実がひとつ成るかどうかといわれているアボカド栽培に挑戦し続け、全国のファンにひとつでも多く国産アボカドをお届けするべく、生産性をあげる取り組みを日々行っています。
7年前、新潟でアボカドが生産できるのか?という状況からスタートし、トライ&サクセス&エラーを繰り返し、美味しさと生産性をあげることに注力してきました。
と同時に、寒冷地における効率的な暖房を模索することで結果的にエネルギーの利用も効率的に行えるようになり、ほとんどが輸入のアボカドのマーケットにも国産という流れを加えることも含め、省エネや脱炭素に少なからず寄与できています。
寒暖差を利用した美味しい雪国アボカドの生産性をさらに上げていくことが、グローバルな視点と局地的な視点の両面に対して定量的な省エネ脱炭素にもつながると確信しています。
次の世代のために一歩前へ進みましょう。
皆様からのご連絡をお待ちしています