高山果樹園(高山知己)

  • 作物ブドウ
  • 地域大阪府
同社概況

高山果樹園(高山知己。以下高山氏)は大阪府太子町でぶどう栽培と直販を行っています。販売の7割は自営の直売所での販売であり、地元ファンのリピート需要や贈答先が新規顧客として購入する等商品自体の魅力により独自の顧客を獲得している優良農家です。
生産は太子町の斜面に展開する波状型ハウスで行われており、必ずしも生産条件に恵まれているわけではありませんが、高山氏の優れた経営手腕が優良な農産物の生産を可能にしています。

経営は奥さんと息子の3名と非常勤のパート2~3名体制で、息子は後継者として就農しています。
規模は借地含めてトータル10町歩あり、デラウエア、巨峰、シャインマスカットが各3割、ピオーネ他で1割という品種構成になっています。

直売所:高山果樹園twitterより

直売所:高山果樹園twitterより

当社の強み

高山氏の経営は、販売の7割が自営直売所という直売比率の高さが特徴です。先代は全量JA出荷であったのですが、高山氏の代になり直売所を開設し直売の比率を高めてきました。

直売の売上比率を高めるには、味の良さに加え見た目の良さも重要であり、何より顧客ニーズに合致した商品作りが重要です。
何よりも顧客が真に求めるモノを供給してこそ直売が成立するのです。直売するぶどうは市場出荷するものよりも糖度は高く、見た目も美しい商品になっています。
また、品種も元々はデラウエア主体でしたが、顧客の嗜好の変化に合わせ品種を変えてきています。まさに顧客ニーズを的確にとらえた生産ができることが高山氏の強みであると言えます。

小人数で最大限効率的な栽培を実現するために、作型を工夫しています。具体的には、デラウエア、巨峰、シャインマスカット、ピオーネといった品種を加温と無加温で栽培することにより作業時期を分散化させ、顧客ニーズに沿った生産実現に向け、丁寧な仕事ができるようにしています。

SDGsの取り組み

当園の最大の特徴はぶどう棚とハウスが一体となった波状型ハウスです。

一般的な波状型ハウス:農水省HPより

一般的な波状型ハウス:農水省HPより

傾斜地面 (一般的な波状型ハウス:農水省HPより)に沿った大変簡素なハウスの作りになっており、アーチ形と比べての設置費用は半分程度で済む、省コスト型のハウス構造です。

また、ハウス壁面には自動開閉システムを導入しており、ハウス内の適温保持と燃料費の削減効果を狙っています。

波状型ハウスは雨水が隙間から入り込みやすい構造なのですが、そうした構造を上手く活用し、雨水をバケツにため込みハウス内に散布する工夫をしています。
販売は直売主体であり、消費者の手元に届くまでの経路が大幅に短縮されることにより、輸送にかかるCO2排出量は削減されます。
また、直売は消費者との直接的な接点を持つことにより生産者自身のやりがいの増進にも役立っています。
さらに、傾斜地利用による波状型ハウスは、通常では利用が難しい土地を農地として保全しているという効果もあります。

傾斜地利用の高山氏ハウス内

傾斜地利用の高山氏ハウス内

雨水ため込みバケツ

雨水ため込みバケツ

省エネへの取り組み

栽培に当たっては、加温と無加温の組合せを重視しています。
同じ品種でも、加温と無加温で栽培することで、出荷時期を分散させる効果も期待できるのです。
加温栽培においては、ハウス内の温度を考慮しつつ、臨機応変に加温対応することを常に意識しています。ハウスは、相当な傾斜地にあり、ハウス内の下部と上部ではかなりの温度差が生じます。従って、ハウス内温度を勘案しながら、状況に応じて下部のみ加温する等のきめ細かな対応を行っています。
なお、ハウス内は段差に応じて仕切が入っており、ハウス全体はいくつかの部屋状の作りになっているため、上下分離の加温が可能になっています。
さらにハウス壁面の自動開閉システムを導入しており、より一層きめ細かな室温管理を実施することで燃料費の節約を実現しています。

自動開閉システム

自動開閉システム

その他

高山氏の直売が伸びている理由は、味と見た目の良さであることは間違いないのですが、もう一点、直売所での顧客対応の良さもあげられます。直売所はまさに人と人がつながる場所であり、人の対応の良さが、人の集まりやすさを生むことで、地産地消に一役買っているということだと思われます。

結論

傾斜地という条件不利地形での営農ですが、地域の農地保全を可能にしつつ、地形を上手く利用しての加温方法や独特のハウス特性を活かした水の利用等随所に工夫が見られました。また、直売比率が高く、顧客ニーズを捉えることが成功の秘訣と語る高山氏には、生産者として消費者と直接向き合うことによる創意工夫をする意欲が感じられ、直売が生産者サイドに与える良い効果も認識させられました。

高山氏は特にSDGsを強く意識して営農を行っているわけでは無いものの、結果として持続可能な営農活動に積極的に取り組むことで、地域で独自の地位を築き、後継者の確保につながった優良事例と言えます。

次の世代のために一歩前へ進みましょう。

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